R・シュトラウス●交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30
学生時代、書店で、竹山道雄訳のこの著書を見て、格調高い訳だなと思ったが、とても歯が立たなくて、消化不良
を起こしそうだとも思い、元の棚に戻した。数年後、岩波書店から、氷上英廣訳のものが出版(復刻)され、これ
は読みやすく一通り読むことができた。彼の中心的な思想である、権力への意思、永劫回帰、超人等の思想を美し
い叙事詩の形式で書かれているのが、よくわかった。今となっては、内容の詳細は覚えていないが、当時夢中にな
って読んだことは覚えている。危険な思想だと言って、話題になっていた頃が懐かしい。最近の若者たちは、他の
ことに忙しくて、このような実用的でない、友人との話題にならないような本は読まないようだ。難しく、骨のあ
る、哲学的な本だから、時間に余裕のある学生時代にトライしてみるという発想は、今では昔のことになってしま
ったのだろうか。曲について言うと、最初のところだけでなく、全体を聴いて欲しいということ。金管楽器やティ
ンパニーやオルガンよりもむしろ弦楽器の調べの美しさに引かれる曲であることがわかる。愛聴盤は、ベームがベ
ルリン・フィルを指揮したもの。ベームは冒頭の部分をさらりと流して、曲全体をじっくりと聴かせてくれる。