スメタナ●連作交響詩「わが祖国」
6曲の交響詩からなる曲集であるが、第2曲の「モルダウ」が有名である。「モルダウ」は、クラシック入門の曲
としてよく演奏される。しかし、6曲全部を通して聴いてみると、第1曲の「高い城」や第4曲の「ボヘミアの森
と草原より」も旋律が美しく、頭の中で音楽で描写されている景色を描きやすい曲であることがわかる。一方、第
3曲「シャルカ」・第5曲「ターボル」・第6曲「ブラニーク」はいずれも地名であるが、その地にまつわる、物
語や史実を音楽として描いているため、具体的な絵が浮かびにくいのかもしれない。第1曲・第2曲・第4曲で日
頃から抱いている祖国に対する深い愛情を持って、祖国の自然を描き、第3曲・第5曲・第6曲では、祖国の歴史
的事実等を曲に盛り込むことで、祖国を誇りに思う気持ちや敬愛の念を示したかったにちがいない。「わが祖国」
を作曲していた頃、スメタナは、耳が聞こえなくなり、幻聴もあったため、精神疾患となった。第5曲・第6曲が
激しい音楽なのは、当時のスメタナの不安定な心の状態と大いに関係がある。それでも、祖国を愛したスメタナ
は、耳を酷使する作曲の労を厭わずに、大作を完成させた。愛聴盤は、ターリッヒ指揮チェコ・フィルの永遠の名
盤。