バッハ●無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番ロ短調
 
純粋にヴァイオリンの音色を味わいたいのなら、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータがいいと思

う。ヴァイオリンの独奏で、艶のあるなじみ易い旋律がたんのうできるからだ。この曲の名盤(全集)として、シ

ェリング盤がある。今でもよく聴くが、3年程前に、マルツィ盤(ソナタ、パルティータ各一番を収録)を入手で

きたので、今はこの精緻の極みとも言うべき演奏を満喫している。古いレコードのため表記がソナタの第1番・第

2番となっているが、実際はソナタの第1番とパルティータの第1番である。神戸の中古レコード店らるごで購入

したが、盤質も良く申し分ない。針を下ろして、目を閉じると、マルツィが私のすぐそばに立ってヴァイオリンを

引いているようだ。秋になってクラシック音楽をじっくりと味わいたいと思い始めたら、まずこのレコードのB面

を聴く。マルツィの演奏は、最初のうちは感情を表に出さずに引いているが、中程から曲の最後にかけて徐々に感

情の高まりを見せ、それでも大きく揺らぐことはない。そして、抑制の効いた程よい高みに登りつめたところで、

曲を終える。音は澄んでいて、演奏も完璧である。このレコードを充分味わい、この秋にはこんな演奏に接したい

と願うのである。

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