ドビュッシー●前奏曲集第1巻 
 
「デルフィの舞い姫たち」、「亜麻色の髪の乙女」等、印象的な標題を持つ曲が12曲集められている。愛らしい

小品集というより、各曲が個性的で全曲を通して聴くと、フランス音楽をたんのうした気分になれる。ベネデッテ

ィ=ミケランジェリのレコードは、この曲の名演と言われており、私の愛聴盤でもある。とにかく音が良いのだが、

単に録音する側の努力だけでなく、ミケランジェリが様々な点で配慮をしているように思う。残音がほとんど聞

こえなくなるまで細く長く鳴り続けたり、大音量が全く濁ることなく協調的に響きあったり、ピアノの音色がある

時は輝きを持ち、ある時は鈍色の音を出す。各曲を忠実に演奏するため、一曲一曲の表情を変えているのがよくわ

かる。一音一音を大切にし、不安定さ軽々しさを全く感じさせない不朽の名演と言える。とにかく、ミケランジェ

リがこのレコードをいつまでも人々の心に残すため、自らの心血をそそいで作り上げたことは疑いない。そうして

ミケランジェリのこの曲に対する愛着や思い入れが実を結び、こうして今私たちは、すばらしい技術で録音された

充実した内容の演奏を聴くことができるのである。

 

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