ムソルグスキー●組曲「展覧会の絵」
純粋なクラシック音楽ファンからは敵視されるかもしれないが、私が初めてこの曲を聴いたのは富田勲氏のシンセ
サイザーの演奏で、今でもよく聴く。ムソルグスキーのピアノ曲を、ラヴェルをはじめ多くの作曲家が編曲し、オ
ーケストラが演奏しているが、私個人の好みを言えば、この曲は一つの楽器で演奏するほうがよいように思う。ベ
ートーヴェンの「熱情」やシューベルトのさすらい人幻想曲をオーケストラ演奏するのを想像してみるとわかりよ
いと思うが、演奏が白熱化してテンポが速くなってくると、オーケストラに高度な技術と指揮者のセンスがなけれ
ば、しまりのない演奏になってしまうので、こういったピアノ曲のオーケストラによる演奏は非常に困難と言って
いい。チェリビダッケが来日した時に、この曲を取り上げ、その放送を聴いたが、非常に緊張した空気の中で、確
か、ロンドン交響楽団がすばらしい演奏をしたことを記憶している(今でも、エア・チェックしなかったことを後
悔している)。オーケストラによる演奏ですばらしいなと思ったのは、このときだけである。愛聴盤は、ホロヴィ
ッツ盤。最後の約10分間の異常な盛り上がりは、他の演奏では聴くことのできないものである。