モーツァルト●ピアノ・ソナタ第11番イ長調K331「トルコ行進曲付き」
モーツアルトは17曲のピアノ・ソナタを残しているが、私は第8番と第15番とこの曲以外はほとんど聴かない。
名演との出会いがないからであるが、今後じっくり聴いてみたい曲が多い。まずは名盤と言われているギーゼキ
ングの全集を音の良いレコードで聴いてみたいと思っている。この曲ではホロヴィッツの1966年カーネギー・
ホール・コンサートというレコードの中にある演奏を愛聴している。へブラーの標準的な演奏では少し物足りない
と感じる私は、鮮烈な感動が残るこの演奏が唯一全曲を通して聴けるレコードである。終楽章のトルコ行進曲をア
ンコールピースとして演奏されることは多く、質の高い演奏もよく聴くが、三つの楽章をバランスよくじっくりと
聴かせてくれる演奏はなかなかない。このコンサートは1965年のコンサートで復活を果したホロヴィッツが、
技巧的にも完全な状態に戻ったことを印象づけた、実質的な復活コンサートである。第1・第2楽章の異常な緊迫
感と終楽章のこの上ない盛り上がりは、少し速めのテンポも手伝って期待感を一気に頂点へと導いてくれる。