シューベルト●ピアノ・ソナタ第13番イ長調D664
愛らしくて、美しい曲である。シューベルトの曲は旋律が美しく聴きやすい曲が多いが、この曲は20分位の曲な
ので、シューベルトのピアノ独奏曲を聴いてみたいと思ったら、即興曲集かこの曲を聴くとよいと思う。個人的に
は、華やかなさすらい人幻想曲や心にしみるピアノ・ソナタ第21番も好きであるが、聴いてすぐ好きになれる曲
といえばこの曲である。フライシャー盤とリヒテル盤を持っているが、どちらもすばらしい演奏である。どちらか
一つと言えば、やはり重厚で深みのあるリヒテル盤である。リヒテルはバッハの平均律クラヴィーア全集の他、ベ
ートーヴェン・シューベルト・シューマンに名演を残しているが、チャイコフスキーやラフマニノフ等ロシアの作
曲家の作品にも名演が多い。リヒテルのベスト・レコードはラフマニノフのピアノ協奏曲第2番であると思うが、
その次に来るのが、さすらい人幻想曲の名演も聴けるこのレコードではないだろうか。リヒテルの強靭なタッチは
愛らしいこの曲に少し合っていない気がするが、何度か聴いているうちに、軽く聞き流してしまいそうなこの曲を
心に残る、深みのある曲に変えていることがわかる。