シューベルト●ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D960
シューベルトの(遺作)と言われるものに、弦楽五重奏曲D956、「白鳥の歌」D957等があるが、シューベ
ルトの代表作であり、それ以前のどの作品よりも美しく、悲しい。このピアノ・ソナタのイメージは、一言で言え
ば、惜別。自分の死を予感したシューベルトが、「いろんなことがあって、楽しかったよね。でも、近く別れなき
ゃならないんだ。僕のことを忘れないでほしいから、友情のしるしとしてこの曲を残しておくよ。これを聴いたら、
僕のことを思い出してね」と友人たちに言っているようだ。このピアノ・ソナタを永遠の別れの曲と解釈して演奏
すると、身を切るような、聴くのがつらいものとすることもできるだろうが、良識ある演奏家は、悲しみを強調し
たり、仰々しい盛り上がりを作ったりしない。淡々とした演奏の中に哀愁を漂わせ、魅力あるピアノ曲にしている。
大好きな曲なので、いくつかレコードを持っている。リヒテル、ベルマン、R・ゼルキン、ブレンデル、ケンプを
持っているが、比較的音の良い、ベルマンのレコードをよく聴く。最近になって、ケンプのレコードを購入して
聴いているが、申し分のない演奏なので、この曲の愛聴盤になりつつある。