シューベルト●幻想曲ハ長調D760「さすらい人」
私が、最初に興味を持ったピアノ曲がこの曲である。それまでは、トルコ行進曲やエリーゼのために等をなんとな
く聞いていた。クラシック音楽を聴き始めてしばらくして、たまたまFM放送でブレンデルのピアノ・リサイタル
の模様を流していた。その中でこの曲が演奏され録音した。まず驚いたのは、この難しい曲を全くミス無く、コン
サートでひく人がいるということ。そして哀愁漂うところでは、思わずしていることをやめて聴き入らせるだけの
説得力があるということにも感心した。すぐにブレンデルのファンになり、この曲のレコードを購入した。ブレン
デルは、ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンの曲に名演を残しているが、私は、この演奏が最も好きだ。こ
のレコードの他、ミュンシュ指揮パリ管弦楽団のブラームス交響曲第1番、ストコフスキー指揮ニュー・フィルハ
ーモニア管弦楽団のチャイコフスキー交響曲第5番に出会わなければ、クラシック音楽に魅せられることはなかっ
たにちがいない。三つの曲に共通していること、それは終わりに向かって異常に盛り上がること。それは何度挫折
しようと、向上心があれば、道は開けると言ってくれているようだ。また、普段以上の力が出せるような気にさせ
る、魔法の曲である。