シューマン●クライスレリアーナ作品16
私がクラシック音楽を聴き始めた頃、各レコード会社でおすすめのピアニストがあって、フィリップスがブレンデ
ル、ポリドールがポリーニ、キングがアシュケナージ、ソニーがホロヴィッツ、ビクターがリヒテルだったと思う。
ここで言うおすすめのピアニストは、私が勝手につけた名称であるが、演奏の内容にかかわらず、新譜の全てが
一聴に値するものとされ、クラシック音楽ファンの購買意欲をそそったものだった。私もご多分に漏れず、○○の
△△だとか、☆☆の□□だとかの新譜をよく検討しないで購入し、後悔したものだった。偉そうなことを言ってい
る私は、実は楽譜がほとんど読めない。ただ、耳に入って来る音楽が心を動かすものか、技巧がすぐれたものか等
の私なりの判断基準によって、感覚的に選り分けているだけだから、私の評価は一般的なものから離れている恐れ
は充分ある。ただ、レコード評は熟読しているし、評論家諸氏の考え方と著しく違ったことはほとんどない。アシ
ュケナージは中庸の美徳を持ったピアニストと言われたことがあり、それはポリーニほど派手でなく、ブレンデル
ほど地味でないという意味であろうが、この曲をひくアシュケナージは派手で、中庸の美徳にとどまっていないの
で、私は好きである。