ベートーヴェン●交響曲第6番へ長調作品68「田園」

 
この曲はベートーヴェンの標題音楽として一番有名な曲で、第1楽章から終楽章まで各楽章に表題がつけられています。

第1楽章「田舎に着いたときの愉快な気分」、第2楽章「小川のほとりの情景」、第3楽章「田舎の人々の楽しい集い」、

第4楽章「雷雨、嵐」、第5楽章「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」となっていますが、前半の穏やかな情景描写の

音楽に比べて、第3楽章以降の(特に第4楽章の激しい雷雨、嵐の描写は心を動かさずにはおられませんが)描写はおだやかな

のんびりとした情景描写の音楽と見事な対比を見せていて、最後までこの自然を音で綴った音楽を堪能させてくれます。

ベートーヴェンの音楽は、「苦悩を突き抜けて歓喜に至る音楽」が多くの人に好まれ、私もその一人なのですが、この田園

交響曲の後半部分もそういった音楽になっていて、この曲が人々に愛されている理由のひとつになっていると思います。

私がこの曲に興味を持ち、レコードを集め始めたのは、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルのレコードを日本盤で聴いてからですが、

ベームというドイツの古典派音楽の第一人者が指揮したというだけでなく、彼が多くの名演を残している、世界一のオーケストラとの

共演ということで、申し分ない、これ以上は臨めない演奏となっています。ただいわゆるプレミアム盤というものがなく、ドイツ・

グラモフォンなので、赤ステ(ジャケットのタイトルの下のところのSTEREOの表記に赤色の網掛けがある)でなくても、チューリップ・

ラベル(レコードのラベルの縁のところにチューリップの花が連なり円を描いている)があればと思うのです。

でも残念ながら、このレコードには蒐集家が求めるようなプレミアム・レコードはありません。

カール・ベーム指揮ウィーン・フィルの演奏に魅せられて以来、音でそれを超える田園交響曲の演奏がないものかといろんな

LPレコードを買って来ました。その中ではワルター指揮コロンビア交響楽団、シュミット=イッセルシュテット指揮ウィーン・フィル、

モントゥ指揮ウィーン・フィル、シューリヒト指揮パリ音楽院管弦楽団の4枚のLPレコードは甲乙つけがたいと思っています。

ベーム盤は別格として、他の4つのレコードを比較してみますと、シュミット=イッセルシュテット盤はラージデッカ、モントゥ盤は

リヴィング・ステレオと音の面では他の2枚より優れています。またこのふたつのレコードではオーケストラがウィーン・フィルで、

つやのある甘味な弦楽合奏を楽しむことができます。ワルター盤はいまでも人気のあるレコードですが、コロンビア交響楽団は

モーツァルトの交響曲やブラームスの交響曲第4番で聴かせるほどの充実した演奏内容となっていない気がします。また

シューリヒト盤はワルター盤(1958年)以上に古い録音(1957年)なので大きなステレオ装置で聴くとノイズが目立つ

ように思います。

シュミット=イッセルシュテット盤やモントゥ盤のプレミアム盤を渋谷のライオン、阿佐ヶ谷のヴィオロン、高円寺のルネッサンスに

持ち込んで聴くことがありますが、本当に心が洗われる気がします。終楽章の弦楽合奏の優しい調べが心にしみ着いた、浮き世の煤を

浄化してくれる気がするのです。