ブラームス交響曲第1番ハ短調作品68


私は、幼い頃から音楽を聴くのが好きでした。音楽は本とともに私の人生に大いなる恩恵を齎してくれたもので、このふたつが

なければきっと人生のどこかで行き詰まりを来していたでしょう。それぞれいくつかの効用がありますが、本は、心を豊かにする、

人生の指針となる、知識を身につけるなどがあります。一方音楽は、異国の文化をいち早く吸収できる、共有することで

仲間が作れる、ストレス解消ができるなどがあり、それらの効用を私は数えられないくらい利用しました。

私は、幼い頃からクラシック音楽を聴いていたわけではありません。大まかに言うと、幼少の頃は歌謡曲、中学生の頃は外国の

ポップスとロック、高校生の頃は日本のフォーク、高校を卒業して20代半ばまではクラシック、それ以降はクラシックとジャズ

というふうに、年齢によって夢中になった音楽が異なります。幼少の頃は親と一緒に見たテレビがその情報源だったのですが、

中学生になって以降はラジオで情報を仕入れ、じっくり聴きたいと思った曲のレコードを購入するということが多くなりました。

ヒット曲のリクエスト番組ではやりの曲を知り、懐メロのリクエスト番組でいつまでも人の心に残る名曲を知りました。

大学を卒業するまでは、音楽の情報を入手するための最も手短で堅実な手段がラジオであり、FM雑誌の番組表を見て

興味を持ち、実際に聴いてみて気に入って購入したレコードは、ほとんどがいまでもしばしば聞くよいアルバムです。

私がクラシック音楽に興味を持ち始めた今から36年ほど前は、本当にキラ星のごとくクラシック音楽を紹介する優れた番組が

ありました。NHK-FMでは、午前8時〜9時(「音楽の部屋」)、午前9時〜10時40分(「音楽のすべて」)、午後1時〜3時(

「午後のクラシック」だったと思います)、毎週金曜日午後7時30分〜9時(「クラシック・リクエスト」)、民放のFM局(

当時関西にはFM大阪しかありませんでした)では、毎週火曜日午後9時〜9時50分(「ステレオ名曲コンサート」?)と

毎週日曜日午前8時〜8時55分の時間にクラシック番組の放送を楽しみにしていて、できるだけクラシック音楽の情報を得ようと

時間があれば耳を傾けたものでした。

このブラームスの交響曲第1番もラジオで聴いた時に気に入ってずっと聴いている曲で、この曲を聴かなかったら、きっと

今のような熱狂的なクラシック・ファンにはならなかったことでしょう。詳しいことはここでは述べませんが、ミュンシュ指揮

パリ管弦楽団が演奏するこの曲のレコードをFM大阪の日曜日の朝の番組で聴き、それまであったひどく暗い憂鬱な気分が消し飛んで

しまったのですから、この曲のレコードを一生涯傍に置いていつでも聴けるようにしておきたいという私の気持もわかっていただける

ことと思います。混沌とした第1楽章から一転、第2楽章では希望の光が射し、和やかな気分にさせる第3楽章をはさんで、

終楽章は輝く人生へと突き進んで行く、こうした人生の応援歌のような名曲を若い悩みが多い頃に聴くことができたのは

本当によかったと思っています。