ブラームス交響曲第4番ホ短調作品98


ブラームスは、4つの交響曲を残しています。この第4番が最後の交響曲で枯淡の境地などと言われますが、

この曲を作曲した当時ブラームスはまだ52才で、このあと63才で亡くなるまで、ヴァイオリンとチェロの

ための二重協奏曲、チェロ・ソナタ第2番、ヴァイオリン・ソナタ第2番と第3番、クラリネット三重奏曲、

クラリネット五重奏曲、クラリネット・ソナタ第1番と第2番などの名曲を残しているので、最晩年という

のは当てはまらないと言えるでしょう。作品120の2つのクラリネット・ソナタが最晩年の作品と

言えるのではないでしょうか。

それでもこの曲は、冒頭の旋律をはじめブラームスのいぶし銀の渋い旋律が随所に見られます。52才にしてこの境地か

と思わせます。古典的な手法の中にロマン派的な表情も見せるこの円熟した作品は、古典派、ロマン派の数ある

交響曲の中でも最も優れた作品の中のひとつと言えると思います。

そういったブラームスが作曲技法を駆使した曲なので演奏が難しい曲だと思っていましたが、同じ職場で働いて

いる女性がこの曲のヴァイオリンを演奏するということで、2014年3月23日に箕面のメイプルホールに

出掛けました。彼女の所属するオケは、セント・マーティン・オーケストラで、河崎聡氏の指揮ですばらしい

演奏を聴かせていただきました。メンバーは社会人がほとんどで、音大を卒業した人もおられるようですが、

大学のオーケストラで演奏していて、社会人になってからもクラシック音楽を演奏したいと考えている人の

ために応えている楽団なのだと思いました。前から7列目の席で第1ヴァイオリンを奏でる同僚の演奏後の

満足そうな表情を見て、彼女が、とても好きな曲なんですと言っていたのを思い出しました。

レコードは以前から、ワルター指揮コロンビア交響楽団の演奏を聴いています。C.クライバー指揮

ウィーン・フィルはオーケストラの上手さと明るい演奏に概ねよい評価を得ていますが、いぶし銀の渋い演奏、

枯淡の境地を求める私は物足りなさを感じさせます。C.クライバーの演奏は、ブラームスがこの曲で

表現しようとした世界、しみじみと心にしみわたる悲しみや再会の望みのない親しい人との別れを

描いていないような気がするのです。