モーツァルト●交響曲第41番ハ長調K551「ジュピター」
この曲の名盤と言えば、カール・ベームがウィーン・フィルやベルリン・フィルを指揮したものやブルーノ・ワルターが
コロンビア交響楽団を指揮したものがまず浮かびますが、私はクラウディオ・アバドがロンドン交響楽団を指揮したものが好きです。
このレコードを録音した時、アバドは46、7才で、演奏も溌剌としていて、このモーツァルトの最後の風格のある交響曲を
心行くまで楽しませてくれます。
私が初めてアバドを聴いたのは、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」でしたが、ウィーン・フィルの弦が艶やかで美しく、
第2楽章が特にすばらしいと思いました。アバドはウィーン・フィルを指揮して、フリードリッヒ・グルダ(モーツァルトピアノ
協奏曲第20番、第21番)やナタン・ミルシテイン(メンデルスゾーンとチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲)と
不朽の名盤を残しましたが、その少しあとに幼い頃からの親友であるマウリツィオ・ポリーニとブラームスのピアノ協奏曲第2番の
名演を残しています。
アバドは、オペラでもたくさんの名盤を残しています。ビゼーの「カルメン」、ロッシーニの「セビリャの理髪師」「ランスへの旅」、
ヴェルディの「アイーダ」「シモン・ボッカネグラ」「仮面舞踏会」などがありますが、中でも「セビリャの理髪師」は配役が同じDVDが
発売されていて、食わず嫌いのところがあった私にオペラへの道を開いてくれました。 このレコードでは、ヒロインのテレサ・ベルガンサや
フィガロ役のヘルマン・プライそれからアルマヴィーヴァ伯爵役のルイジ・アルヴァ、バルトロ役のエンツォ・ダーラ、
バジリオ役のパオロ・モンタルソロなど魅力いっぱいの歌手を揃えています。
話は変わりますが、私は3ヶ月に1度、東京阿佐ヶ谷のヴィオロンで「LPレコードコンサート」を開催しています。第26回の
「LPレコードコンサート」ではブラームスの交響曲第1番と第3番、先にあげたピアノ第2番の協奏曲を聴いていただきました。
また第48回目では、アバドのマーラーの交響曲第3番と第7番「夜の歌」をお聴きいただきました。そのとき痛感したのですが、
アバドの音楽はすばらしいのですが、プレミアム盤がほとんどないのです。それでもマーラーの交響曲第3番はデジタル録音とは言え
音が素晴らしいので、アバドの名盤を1枚と言われたら、迷わずこのレコードをあげることでしょう。
モーツァルトは32才の頃に、第39番、第40番、第41番「ジュピター」の三大交響曲を一気に書き上げたと言われています。
その最後に書かれたのが第41番「ジュピター」ですが、 その後、モーツァルトは交響曲を作曲せず、ピアノ協奏曲第27番、
歌劇「魔笛」、クラリネット協奏曲、レクイエム(未完)などの作品を残して、35才の若さでその生涯を閉じました。