ベートーヴェン●交響曲第5番ハ短調作品67「運命」
第二次世界大戦後、フルトヴェングラーは、ナチスドイツと深いかかわりがあったので、しばらく音楽活動を停止
せざるを得なかった。しかし、1947年のベルリン・フィルとのこの「運命」の演奏から、音楽活動を再開する。
この貴重なライヴ録音が、レコードとして残っている。ここには、再起を果した一人の偉大な音楽家の大いなる
喜びがある。第1楽章のアイン・ザッツ(出だし)の乱れから、ただならぬ雰囲気を感じとることができる。その
他、ポルタメントや絶妙のテンポの多用により、大きくうねって心の奥にまで達するような感動をもたらす。そし
て、第3楽章の終わりから終楽章の最初にかけての高揚感、爆発。終楽章は少し早めのテンポで演奏し、より緊迫
した雰囲気を作り出している。フルトヴェングラーのことでよく言われるのは、指揮棒の動きが尋常でなかったと
いうこと。それにより、演奏家との間に緊張感を生じさせ、他の指揮者に真似のできない独自の音楽が構築できた
のだと思う。