ベートーヴェン●交響曲第7番イ長調作品92
この交響曲は、第2楽章に葬送行進曲を持つ(第4楽章は、舞踏の権化と言われる)。この曲の葬送行進曲は、シ
ョパンのピアノ・ソナタ第2番第2楽章のように、ただ暗く沈んだ曲相でなく、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ
第12番「葬送」の曲全体の曲相に似ている。そこには最愛の人を失った悲しみや孤独感もあるが、それを克服し、
以前の生活に戻って行けるように励ましていると感じる。ショパンの葬送行進曲は死を傍観するだけだが、ベー
トーヴェンのそれは、悲しみの境地にある人間の心を励まし、慰めているように思う。この曲を初めて聴いた頃は、
カルロス・クライバー盤の評判が良かったので、よく聴いていたが、今はやはり、フルトヴェングラーの194
4年のライヴ盤が愛聴盤である。ライヴ盤であり、戦時中のドイツにおける録音であるため、独特の雰囲気がある。
フルトヴェングラーは、第二次世界大戦中、音楽によって人々を煽ったとして、戦後苦しい立場に立たされるこ
とになるが、彼の音楽を愛する人々からの支援で復活し数々の名演を残すことになる。