ベルリオーズ●幻想交響曲作品14
 
古今東西、愛をテーマにした作品は多い。特に悲恋は、同じ境遇の若者に教戒、感動、絶望等の大きな影響を及ぼ

す。芸術がすばらしい反面、危険なところがあるというティピカルな例であるが、報われぬ恋に膨大な時間を費や

してしまうのは世の常である。そうして、報われぬ恋にのめり込んだ若者は、この幻想交響曲の心臓をじりじり焼

いてしまうような曲全体に流れている雰囲気にのみ込まれ、すぐにこの物語の主人公と自分を同一化させてしまう。

第2楽章で心ときめかせ、第4、第5楽章の悲劇的結末に熱くなってしまうのである。そして、来る日も来る日

も欲求が満たされないことを嘆き、片思いの彼女が、少しでも自分に関心を示してくれたら幸福で、一度も会えな

かったら、その日は不幸となる。そして、芸術にのめり込む。多感な十代後半から二十代後半までに、こういった

ことは卒業してしまうのが一般的であるが、私のようにいまだに引きずっているのもいる。オーソドックスで聴き

やすいのは、モントゥーがサンフランシスコ交響楽団を指揮したレコード。白熱した演奏となるとミュンシュ指揮

ボストン交響楽団の1962年盤がいいと思う。

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