チャイコフスキー●交響曲第1番ト短調作品13「冬の日の幻想」
「冬の日の幻想」の標題を持つこの交響曲は、チャイコフスキー28才の時の作品である。非常に民族色の濃い、
全編ロシアの大地を彷彿とさせる旋律の連続で、しかもチャイコフスキーの若々しい息吹きが感じられる佳曲であ
る。標題からして、この曲を聴くのは冬に聴くのが、しかも厳冬の時期に聴くのが、情況が目に浮かび、しみじみ
と心に染みて心地よいと思う。若い頃の作品は充分な自己形成が成されておらず、また作曲技法の熟練していない
ことがよくあるが、その代わり、泉のごとく涌き出る旋律に満たされ、感動させることがしばしばある。まさにこ
の曲がそうで、美しい旋律にあふれ、聴き手の心を捕らえて離さない。また、チャイコフスキーの第4番以降の交
響曲にあるようなくどさがなくて、さわやかである。愛聴盤は、スワロフスキーがウィーン国立歌劇場管弦楽団
を指揮したもの。とにかく、弦の音が美しい。この他、オーマンディーがフィラデルフィア管弦楽団を指揮した
レコードや、カラヤンがベルリン・フィルを指揮したレコードを入手したいと思っている。どちらも評価の高い
演奏で、特にカラヤンはCDでそのすばらしい演奏を確認済みである。