ベートーヴェン●ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73「皇帝」
「皇帝」とブラームスのピアノ協奏曲第2番は、スケールが大きく内容が充実しているので、聴きごたえがある。
前者がベートーヴェン35才の時、後者がブラームス48才の時の作品で、円熟の時代に作られたものと言える。
ところで、話しは変わるが、ヴィルトォーゾ・ピアニストという表現がある。このピアノの巨匠が、取り上げる
作品はどんなものだろうか。私が考えるところでは、スケールの大きな、技巧を駆使する作品、例えば、先に記し
た二つの他、ラフマニノフの第2番の協奏曲とチャイコフスキーの第1番の協奏曲、4曲を独自の解釈で演奏でき
るピアニストを指すのだと思う(もちろん、他のピアノ曲もある程度引きこなせた上での話しであるが)。だが、
これによると、リヒテル、ホロヴィッツ、ルービンシュタインは、その範疇に入るが、バックハウスやケンプのよ
うなロシア物をほとんど引かないピアニストは入らなくなってしまうので、正しくない分類の仕方と言える。しか
し、厳格なドイツ音楽を引く、円熟したピアニストが、どちらかと言うと、自由奔放でしかも華麗なロシア音楽を
どのように解釈するのか、聴いてみたかった気がする。なお、「皇帝」の愛聴盤は、この上ない美しい音で技巧を
駆使する、カッツ盤である。