ベートーヴェン●ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61
愛聴盤は、オイストラフとクリュイタンス指揮フランス国立放送管弦楽団が共演したレコードである。ハイフェッ
ツとミュンシュ指揮ボストン交響楽団が共演したレコードも名演で、共によく聴くが、私は、前者に軍配を上げた
い。演奏時間を比較してみると、前者が45分27秒、後者が37分35秒と約8分の差がある。一言で言えば、
前者はゆったりとしたテンポで心にしみ込んでくる感じ、後者は速いテンポにより段々と演奏が白熱化していく
感じ。その日の気分で聴きたい演奏が変わるが、最近はオイストラフ盤を聴くことが多い。黄金色をした夕日が
静かに海に沈んでゆくようなイメージを持つ、第一楽章は、オイストラフの演奏を聴いていると、その雄大な景色
を見ているような気持ちになってしまう。一方、ハイフェッツの場合は、非常にテンポが速いので、無駄な贅肉を
削ぎ落とした、厳格なイメージのものなので、そこには、海岸の砂浜に腰を下ろして日没時の景色をながめている
というイメージはあまりない。自然を愛する私は、きれいな夕日を想起させてくれるオイストラフ、クリュイタン
スの解釈に拍手を送りたい 。