ベートーヴェン●ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲ハ長調作品56
ベートーヴェンの作品の中で、三重協奏曲(トリプル・コンチェルト)は、評判のよくない曲である。私も、最初、
リヒテル、オイストラフ、ロストロポービッチがカラヤン指揮ベルリン・フィルと共演したものを聴いて、ソロ
の楽器同士が自己主張しすぎて騒々しく聞こえ、やはり作曲に問題があるのかなと思っていた。しかし、その後、
アラウ、シェリング、シュタルケルとインバル指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団の共演したものを聴いて、
この曲をよく聴くようになった。この演奏の良いところは、ゆったりしたテンポとソリスト同士の心配りで、お互
いの音がぶつかって聴きづらくならないように、細心の注意を払っているところだと思う。そうすることで、ソロ
のそれぞれのパートが、はっきりときれいに聞こえるのである。また、アラウの落ち着いた明るい音と、シェリン
グの中庸の明快な音と、シュタルケルの低音の響く渋い音が合わさって、心地良くさせるところもすばらしい。フ
ィリップスの初期盤を購入したため、音も良く、それも好印象につながっているのかもしれない。インバルは、一
時期、マーラーの交響曲全集で知られていたが、フィリップスと契約していた時に、たくさんの名演を残している
のではないだろうか。