ドヴォルザーク●チェロ協奏曲ロ短調作品104
フルニエがセル指揮ベルリン・フィルと共演したものとカザルスがセル指揮チェコ・フィルと共演したものの二つ
が名演と言われているが、甲乙つけがたい。フルニエ盤は、フルニエの繊細な表現とセルが指揮する華麗な伴奏が
合わさって完成度の高いものが出来ている。カザルス盤は、カザルスのチェロは迫力があって申し分ないが、チェ
コ・フィルの伴奏が少しおとなしく、独奏チェロとのバランスに欠ける点も否めない。また、ノイズも多く、音質
の面では、あまり満足できるものではない。しかし、チェロの巨匠の名演は、それらの問題があっても、一聴の価
値があると思う。オーケストラに迫力がなくても、スケールの大きなカザルスの演奏が始まると、身を乗り出して
聴きいってしまう。音が悪くても、カザルスの大胆で骨太の音が聞こえると演奏のとりこになってしまうのである。
私は、1915〜24年の小品ばかりを集めた自主製作レコードを持っているが、もちろん、音質は悪い。けれ
ども、耳を澄ますと、そこには確かに若々しいカザルスのチェロの音が聞こえて来るのである。総合的には、フル
ニエ盤が勝るが、カザルス盤には、人を夢中にさせる何かがある。