エルガー●チェロ協奏曲ホ短調作品85
最近、デュ=プレの伝記映画が公開され、その映画の中でこの曲が使用されていたようである(私は、サウンド・
トラック盤は持っているが、映画は見ていない)。まさにこの曲のバルビローリと共演したものが、デュ=プレの
最高のレコードと言っていい。デュ=プレは、当時、夫君であった、バレンボイムの指揮でドヴォルザーク、ハイ
ドン、ボッケリーニの協奏曲を残しているが、他の演奏家とベートーヴェン、ブラームスのソナタを演奏する等、
名曲の多くをEMIに残している。私見であるが、チェロと言えば、二つの演奏方法があって、一つはカザルスの
ような豪放磊落な演奏、もう一つはフルニエのような繊細でいぶし銀を散らしたような渋い演奏のどちらかである
と考える。デュ=プレの演奏の多くは、どちらにもあてはまらず、私にとっては、中途半端な感じがする。それに
対し、バルビローリ指揮ロンドン交響楽団と共演したこのレコードは、バルビローリの指揮が優れているので、渋
く、心に強く訴えてくるすばらしい演奏になっている。デュ=プレは、若くして難病を患い、晩年は不幸であった。
健康で、長く生きて、カザルスやフルニエのような、あるいは女性としてもっと違ったタイプのチェロの大家と
なってほしかった。