モーツァルト●ヴァイオリン、ヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K364
モーツァルト23才の時の作品で、当時、モーツァルトは、母親と死別し、さらに作曲家ウェーバーの妹(アロイ
ジア・ウェーバー)に恋をしたが、かなわず、失意の状態にあったという。そのため、この曲の第2楽章が、悲し
みに満ちたものとなっていると言われている。当時、天才モーツァルトの心の痛手がどれ程のものであったかは知
る由もないが、凡人の私であっても、失恋の悲しみが誰にとっても大きなものであることはよくわかる。ただ、最
愛の人を永遠に失う痛手(モーツァルトの場合は、二つが一度にやって来た)と比べると小さなものであろう。よ
く、この恋がかなわないなら、生きている甲斐がないと言って、恋愛至上主義を高らかに宣言する人がいるが、果
して、そうなんだろうか。確かに、一生に一度、心の底からの熱い気持ちを打ち明けたが、かなえられず、失意の
どん底に落とされる気持ちは、計り知れない。しかし、そこで人生をあきらめると、それ以後、もしかしたらある
かもしれない幸福がつかめないではないか。失恋以外にも、失意のどん底はあるが、とことん暗くなったら、明か
りが射すしかないと信じて、がんばってほしいと思う。愛聴盤は、ベームがベルリン・フィルを指揮したもの。