モーツァルト●ピアノ協奏曲第21番ハ長調K467
『みじかくも美しく燃え』と言う、スウェーデン映画で、この曲の第2楽章の旋律が使われ、よく知られている。
『みじかくも美しく燃え』と言うタイトルは、モーツァルトの35年という生涯ともだぶり、秀逸なタイトルで
あると思う。他に、若くして亡くなった作曲家としてよくあげられるのは、シューベルト(31才)、メンデルス
ゾーン(38才)、ショパン(39才)である。円熟した彼らの作品をもっと聴きたかったという気もするが、彼
らが、みじかくも美しく燃えたため、シューベルトの切々と胸に訴えるような音楽、メンデルスゾーンのような静
かな中にも情熱的な音楽、ショパンのような祖国ポーランドを離れ望郷の念から生み出された音楽が、今聴けるの
ではないだろうか。ここにもう一人、みじかくも美しく燃えた、ピアニストがいる。その名は、ディヌ・リパッテ
ィ。彼も、わずか33才でこの世を去った。彼は、この曲をライヴ録音で、見事に演奏している。そこには、余命
幾許もない、才能豊かなピアニストの悲しみも感じられて、本来明るい曲相のこの曲に陰影を作り出し、彫りの深
い表情を持たせ、深い感動を呼び起こすのである。