モーツァルト●ピアノ協奏曲第24番ハ短調K491
愛聴盤は、カサドシュがセル指揮コロンビア交響楽団と共演したものである。私は、コロンビア盤(日本盤)を持
っているが、そのジャケットが不思議な絵(エッチング版画)なのである。左半分に覗き穴があり、その向こう側
に中世に建てられたような城郭あるいは中世の都市が見える。右半分には、右手があり、親指と人差し指で覗き穴
の向こう側の世界をつまもうとしているかのような絵である。この絵をなぜこのレコードのジャケットに使用した
かは、知りようもないが、深い陰影のあるこの曲が持つ雰囲気とジャケットの絵が描写しているかなえられない希
望(欲望)を表象した絵は相通じ合うものがあると思う。よく見ると、この絵の覗き穴の縁には、槍の切っ先のよ
うなものが見られる。また、手に少し霞みがかかっていて皺が多いところを見ると、夢の中に出てくるような、シ
ュールな絵なのである。この絵が気に入った私は、しばらく部屋に飾っていた。よく言われることだが、レコード
のジャケットは、それ自体が第一級の美術品であることが多い。部屋の装飾のささやかな贅沢として、ジャケット
がいいからということで、レコードを購入するのも良いと思う。