モーツァルト●ピアノ協奏曲第27番変ロ長調K595
モーツァルトの音楽をよく一括して、天国的な調べと言うことがある。また、モーツァルトの音楽は明るく、なめ
らかな音楽なので、ベートーヴェンやブラームスのような朴訥として、わき上がって来るような感動がある音楽で
ないとして忌避する人(以前の私もそうだった)がいる。しかし、私は、ピアノ協奏曲第24番、弦楽四重奏曲第
15番、弦楽五重奏曲第4番等を聴くと、モーツァルトも、流暢な語り口は変わらないが、深い感動をもたらす曲
も作っているんだなと思う。この曲は、天国的な調べを持つ曲の代表と言える。なぜなら、この曲は、モーツァル
ト35才、彼が亡くなる年の作品であり、天才が去りぎわに残した、最も浮世離れした音楽であるから。第3楽章
の中に同年に作曲された歌曲「春へのあこがれ」の旋律が用いられている。この「春へのあこがれ」の歌詞の中に
は、すみれが咲きみだれ、鳥たちがやって来る、春への強いあこがれが語られ、詩に対する共感が、この心はずむ
がどこか現実を超越しているような、旋律を生み出したと考えられる。愛聴盤は、やはりグルダ盤。グルダのさら
りと流したような、この演奏は、かえってモーツァルトの孤独感を感じさせ、楽しげな曲に翳りを作り出すのであ
る。