モーツァルト●ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K219「トルコ風」
「トルコ風」という標題を持つ、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の中で最も知られている曲である。以前はグ
リュミオー盤を聴いていたが、今は、クーレンカンプがローター指揮ベルリン・ドイツ歌劇場管弦楽団と共演した
ものを聴く。クーレンカンプは、シューマンのヴァイオリン協奏曲の名演で有名である。この演奏は、本当にすば
らしい演奏であるが、シェリング等ほかの演奏で聴くと、同様の感動がない。録音が古いことを問題視するのを
よく聞くが、名演は少々のノイズがあっても聴く価値がある。かつての巨匠の音楽は、やはりすばらしい。よく
ある勘違いに、録音技術の進歩と同様に、演奏技術も進歩するということがある。ある新しい音楽形式ができたた
めに、その部分だけが、進歩することは考えられることだ。しかし、巨匠と呼ばれる人々が作り上げたような、一
つの完成されたスタイルは、日々の練習の積み重ねによるものであり、今よりも練習は、質、量ともに上であった
と信じる。なぜなら、これ程、様々の誘惑の多い時代は、かつてなかったと確信するから。クーレンカンプやケン
プやフルニエのジャケット写真を見ていると、すばらしい演奏を聴かせてくれそうな気がして、すぐに購入してし
まう。