サン=サーンス●ヴァイオリン協奏曲第3番ロ短調作品61
高校を卒業して、クラシック音楽を聴くようになったが、主に何でクラシック音楽を聴いていたかというと、レコ
ードではなくて、FM放送である。当時は、NHK‐FMで、音楽の部屋、大作曲家の時代、藁科雅美氏のクラシ
ック・リクエスト、吉田秀和氏の名曲のたのしみ、オペラ・アワー等。民放で(当時、近畿地方ではFM大阪のみ
)、柴田南雄氏、石丸博氏、皆川達夫氏が解説される番組があった。中でも、藁科雅美氏と柴田南雄氏の番組は、
欠かさず聴いていた。当時(1978〜82年)によくかかっていたのが、フランチェスカッティ盤のサン=サー
ンス ヴァイオリン協奏曲第3番である(他に、メータの「ツァラトゥストラはかく語りき」、ブレンデルの「ま
す」、クライバーのベートーヴェン交響曲第七番等も非常によくかかっていた)。フランス音楽の繊細さ、華やか
さ、可憐さを持ち合わせた曲で、ベートーヴェンやブラームスのヴァイオリン協奏曲とは、ずいぶん違うなと、当
時思ったものだった。フランチェスカッティは、ある時はヴァイオリンの繊細な音を見事に奏で、ある時は自らの
技巧を駆使し、このフランスのエスプリに満ちた曲を演奏するのである。