本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なおコンサートと言いましても一般の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。
今回は、「エルマン・トーン ミッシャ・エルマンの至芸」ということで、エルマンの演奏をたっぷりと楽しんでいただこうと思います。ヴァイオリニストのミッシャ・エルマンは、1891年にキエフのタルノイに生まれました。4才でヴァイオリンを始めオデッサの王立音楽学校に入学します。その後サンクトペテルスブルグに行きハイフエッツ、ジンバリストなどを育てたレオポルド・アウアーに学び、1904年にベルリンでデヴューします。翌年にはイギリスでロンドン交響楽団と共にチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏し一躍有名になります。エルマンの全盛時代は、1920年代のSP時代の頃と言われますが、本日お聴きいただくレコードは1956年から1960年にかけてのエルマン60才代の頃の演奏です。技巧の衰えは少なからずありますが、エルマンの特色である独特の味わいのあるエルマン・トーンは健在です。特に本日お聴きいただくレコードは名演で、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置から再生される音を聴かれると、エルマン・トーンの美しさを再認識されるにちがいありません。
少し話しが長くなりました。エルマン演奏、まずクライスラーの小品をお聴きいただきます。クライスラーの演奏は後ほどアンコールのところでお聴きいただく予定にしていますが、エルマンの演奏で次の曲目をお聴きいただきます。「コレルリの主題による変奏曲」「マルティーニの主題によるプレギューラ」「ボッケリーニのスタイルによるアレグレット」「フランクールのスタイルによるシチリア舞曲とリゴードン」「ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第1番」「プニャーニのスタイルによる前奏曲とアレグロ」。ピアノ伴奏は、ジョゼフ・セイガーです。演奏時間は約24分です。
次にお聴きいただくのは、「ジュビリー・レコ−ド」という小品集から、1曲だけカットしてお送りします。カットするのは、「サラサーテのチゴイネルワイゼン」。技巧的に難しいところで極端にテンポを落して引いているため、曲の魅力が損なわれていると思い、カットしました。それ以外の曲については申し分なく、安心して聴いていただけます。しばしの間、エルマンの奏でる心地よいヴァイオリンの音に耳を傾けて下さい。曲目は、「マスネ:タイスの瞑想曲」「アレンスキー:セレナード」「シューマン:トロイメライ」「キュイ:オリエンタル」「ドリゴ:火花のワルツ」「ズルツアー:サラバンド」「シューベルト:アヴェ・マリア」「ドヴォルザーク:ユモレスク」「ゴセック:ガボット」「ショパン:夜想曲第2番変ホ長調」「シューマン:予言の鳥」「ベートーヴェン:メヌエットト長調」「チャイコフスキー:メロディー」です。ピアノ伴奏は、ジョゼフ・セイガーです。演奏時間は、約45分です。
ここで10分間の休憩をいただきます。
前半は、ヴァンガードのレコードをお聴きいただきましたが、後半はデッカのさらに音の良いレコードでエルマンの名演をお聴きいただきます。後半最初の曲はブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番です。出だしのところで少し音がはずれているような気がするのですがかえってそこからこの演奏にのめり込んで行く、そんな気が私はするのですが、多分エルマンは意識的にそうして演奏に聴く人を引き込んでいっているのではないでしょうか。エルマン・トーンも心地よく奏でられます。共演はエードリアン・ボールト指揮ロンドン・フィル。演奏時間は約25分です。
プログラムの最後は、「エルマン・リサイタル」というレコードをお聴きいただきます。ほぼ同時期にエルマンは「エルマン・アンコール」というレコードをデッカから出しており、私も持っていますが、愛聴盤ではありません。いわゆるエルマン・トーンが聞けないのです。同じ装丁で多分同時期に録音されたものだと思われますがなぜこれ程違うのかと思ってしまいます。「エルマン・リサイタル」の内容が充実しているので、多くを期待しすぎているのかもしれませんが。曲目は、「サンマルティーニ:パッサカリア」「ヴィターリ:シャコンヌ」「ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ第4番」「バッハ:G線上のアリア」です。ピアノ伴奏は、ジョゼフ・セイガーです。演奏時間は約40分です。
コンサートの最後に、アンコール曲を用意致しました。先程も申しました通り、クライスラーの演奏をお聴きいただきます。曲目は、「愛の悲しみ」「愛の喜び」「アンダンテ・カンタービレ(チャイコフスキー)」です。ピアノ伴奏は、フランツ・ルップです。それから本日はテレビで『戦場のピアニスト』が放映されますので、その中で演奏され心に残った曲、ショパンのアンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズをホロビッツの演奏でお聴きいただきます。
本日は、長い時間レコードコンサートにおつき合いいただき、ありがとうございました。今後とも、このレコードコンサートをご愛顧いただきますよう、よろしくお願い致します。また、プログラムの一番下にありますように、私のホームページも是非ご覧下さい。よろしくお願いします。