本日はお忙しい中、LPレコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、3ヶ月に一度、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても一般の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。
今回は「室内楽の至宝 ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団2」ということで、以前にも特集しましたウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の特集を再度お送りします。主催者の好みにより演奏者に片寄りがあることをお許し下さい。前回はハイドン、ブラームス、モーツァルトの作品をお聴きいただきましたが、今回はすべてシューベルトの作品です。
ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団はウィーン・コンツェルトハウスという演奏会場にレギュラー出演する四重奏団が1934年にウィーン・コンツェルトハウス四重奏団という名称で結成されたものです。結成当初のメンバーは第1ヴァイオリンがアントン・カンパー、第2ヴァイオリンがカール・マリア・ティッツエ、ヴィオラがエーリッヒ・ヴァイス、チェロがフランツ・クヴァルダですが、1967年に解散するまでにメンバーの交代があります。
ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団は、ウィーン情緒豊かな演奏で、1940年代後半から1950年代半ば頃に最も活躍した弦楽四重奏団で、本日お聴きいただくシューベルトの演奏はその頃に録音されたもので、長きにわたり「死と乙女」「弦楽五重奏曲」「ます」の決定盤と言われ、今なおその輝きを失っていない演奏と言えると思います。
シューベルトの室内楽では、他に八重奏曲、ピアノ三重奏曲第2番、アルペジオーネ・ソナタなどの優れた曲がありますのでお聴きいただくようにしたいと考えています。その他交響曲、ピアノ独奏曲、歌曲でシューベルトは優れた作品をたくさん残しています。わずか31才の生涯に数多くのすばらしい作品を残したことは本当に驚くべきことです。シューベルトは、私が最も尊敬する作曲家の一人です。
まずお聴きいただくのは、弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」です。第2楽章が同名の歌曲から主題を取った変奏曲であるため、このような標題がついています。前半の第1楽章、第2楽章に重点が置かれ後半集中力が失われてしまう演奏が多い中、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の演奏は最後まで熱のこもったすばらしい演奏を聴かせてくれます。演奏時間は約39分です。
ここで少し休憩をいただきます。
次にお聴きいただくのは、弦楽五重奏曲です。シューベルト最晩年の曲で、ピアノ・ソナタ第21番、歌曲集「白鳥の歌」と共に遺作と言われている曲です。先程の「死と乙女」同様、悲しみに満ちた旋律が現れますが、励まし明るくさせるような旋律も見られます。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の演奏は悲しみに満ちた旋律はさらりと演奏し、明るい部分を入念に、心を込めて演奏しているように思います。演奏時間は約51分です。
ここで少し休憩をいただきます。
最後にお聴きいただくのは、ピアノ五重奏曲「ます」です。まず楽器編成ですが、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスで、本日お聴きいただくレコードでも、ピアノがバドゥラ=スコダ、コントラバスがヘルマンそしてウィーン・コンツェルトハウス四重奏団員となっています。他のいくつかのレコードも見ましたがやはりヴァイオリンが誰某と書かれておらず、何何四重奏団員となっています。私は2人のヴァイオリニストが楽章毎に交代で引いていると思うのですが、本当のところをご存じの方がおられましたらご教示下さい。「ます」は前の2曲と違い明るい曲相ですが、この曲の第4楽章でその旋律が使われている同名歌曲は漁師に清流をかき乱されたために捕獲されてしまう鱒を描いたものです。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の演奏は明るく、清涼感あふれるものです。演奏時間は約38分です。
コンサートの最後にアンコール曲を用意しました。本日は最後もシューベルトの曲をお送りします。幻想曲「さすらい人」という曲でこの曲も同名歌曲の旋律が使われています。この曲は私にとって思い出深い曲なのです。今から約26年前、FM大阪(こちらではFM東京)で木曜日の夜10時からTDK提供の日本で公演をした外国の演奏家の生演奏を放送するという番組がありました。私がクラシック音楽を聴き始めてすぐの頃にその番組でブレンデルの公演が放送されました。その中にこの曲がありました。私はたまたまこの演奏を録音し、気に入り何度も何度も聴きました。シューベルトが自分で最後まで演奏できなかったと言われるこの曲をブレンデルが軽々と引くのを聴いて、心から感動したものでした。演奏はアルフレッド・ブレンデル。演奏時間は約21分です。本日は、アンコール曲をもう2曲用意しました。いずれもクリスタ・ルートヴィヒ(メゾソプラノ)の演奏でシューベルトの歌曲をお聴きいただきます。「アヴェ・マリア」と「ます」です。以前日本アニメーション製作の「フランダースの犬」が放映されましたが、その最終回で「アヴェ・マリア」が流れましたが、その音源がこのレコードだと思うのですが。ご存じの方がおられましたらご教示下さい。演奏時間は約10分です。
 本日は、長時間に渡り、LPレコードコンサートにおつき合いいただきありがとうございました。今後とも、このレコードコンサートをご愛顧いただきますよう、よろしくお願いします。また、プログラムの一番下にあります、私のホームページも是非ご覧下さい。よろしくお願いします。