本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても一般の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。
今回は、「ヴィルトォーゾ ナタン・ミルシテインの魅力」ということで、ミルシテインの演奏をたっぷりと楽しんでいただこうと思います。
ヴァイオリニストのナタン・ミルシテインは、1904年にウクライナのオデッサに生まれました。19才の時初めてのコンサートで高い評価を得、1925年にはパリでのコンサートを契機に彼の活動はヨーロッパへと移って行きます。1929年には、フィラデルフィア管弦楽団と共演しアメリカデヴューを果たします。その後1942年にはアメリカの市民権を獲得します。
本日は彼がキャピトルレコード時代に録音したピアノ伴奏のレコードと彼のレコードとしては最も有名なアバド指揮ウィーン・フィルと共演したチャイコフスキーとメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲をお聴きいただきます。
4大ヴァイオリン協奏曲は、ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキー、メンデルスゾーンのそれを指し、多くのヴァイオリニストが名演を残して来ました。ミルシテインもこれらの曲を何度も録音しています。本日お聴きいただくレコードは共演のアバド指揮ウィーン・フィルの演奏もすばらしく、ミルシテインが残したレコードの中で最もすぐれたもののひとつと言えると思います。
まずはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲からお聴きいただきますが、落ち着いたじっくりと聴かせる演奏で、彼の晩年の境地を伺い知ることができるような好演です。それではクラウディオ・アバド指揮ウィーン・フィルとの共演でお聴きいただきます。演奏時間は約32分です。
次にお聴きいただくのは、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲です。私個人としては最も好きなヴァイオリン協奏曲のひとつで、ハイフェッツ、オイストラフ、エルマン、オークレール、カンポーリ等のレコードも聴いていますが、じっくりと落ち着いて聴ける演奏としてはこの演奏が最も優れているように思います。本当にすばらしい演奏です。アバド指揮ウィーン・フィルの演奏で。演奏時間は約26分です。
ここで約10分間休憩をいただきます。
後半はピアノ伴奏の曲をお聴きいただきますが、どの曲も魅力に満ちた曲です。ミルシテインの演奏も個性豊かな曲に輝きを持たせるために、洗練された演奏が特徴の彼には珍しく少し灰汁の強い演奏になっています。それではまずは「ミルシテイン・リサイタル」というアルバムをお聴きいただきます。先程の灰汁の強さはこちらのレコードの方が後でお聴きいただく「4つのイタリアのソナタ」よりもより強く、ミルシテインの技巧のすばらしさを知る上で貴重なレコードと言えます。曲目は、ペルゴレージ ソナタ第12番、シューマン 間奏曲、ブラームス アレグロ、スーク ブルレスカ、ブロッホ ニグン、ミルシテイン編曲 パガニニアーナ。ピアノ伴奏はカルロ・ブゾッティです。演奏時間は約28分です。
いかがでしたでしょうか、少し灰汁が強くてしんどかったかもしれません。プログラムの最後に「4つのイタリアのソナタ」をお聴きいただきます。イタリア人の4人の作曲家による有名な4つのソナタをミルシテインがすばらしい技巧を駆使して演奏しています。曲目は、タルティーニ 悪魔のトリル、ヴィヴァルディ ソナタイ長調、コレルリ ラ・フォリア、ジェミニアーニ ソナタイ長調。ピアノ伴奏はレオン・ポマーズです。演奏時間は約36分です。
本日もアンコール曲を用意しました。バッハの無伴奏チェロ組曲第1番です。ヤーノシュ・シュタルケルのチェロでお聴き下さい。演奏時間は約15分です。
本日は、長い時間レコードコンサートにおつき合いいただき、ありがとうございました。今後とも、このレコードコンサートをご愛顧いただきますよう、よろしくお願い致します。また、プログラムの一番下にありますように、私のホームページも是非ご覧下さい。よろしくお願いします。