本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても一般の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。

今回は、「夭折の天才ピアニスト ディヌ・リパッティ」ということで、リパッティのピアノの演奏をたっぷりと楽しんでいただこうと思います。ディヌ・リパッティは、1917年ルーマニアのブカレストに生まれました。父親がカール・フレッシュに師事したアマチュア・ヴァイオリニストで母親もすぐれたピアニストであったため、幼い頃から英才教育を受けます。1934年リパッティはウィーン国際コンクールで2位になりましたが、その時審査員だったコルトーはリパッティが1位にならなかったことに抗議し審査員を辞任したという話しはよく知られています。コンクール出場をきっかけに、コンサート活動が始められますが、第2次世界大戦時には活動を中止せざるを得なくなります。戦後、シューマンとグリーグのピアノ協奏曲とショパンのワルツ集で世界的な名声を得ることになりますが、1950年9月にブザンソンで最後のリサイタルを開いた後、12月には不帰の人となってしまいます。本日は、彼が世界的な名声を決定付けることになったシューマンとグリーグのピアノ協奏曲、ショパンのワルツ集及びカラヤンと共演したモーツァルトのピアノ協奏曲第21番をお聞きいただきます。本日のプログラムに「夭折の天才ピアニスト」とありますようにリパッティはわずか33才で亡くなった天才ピアニストです。よく天才と言われ、わたしも天才という言葉を使いましたが、むしろリパッティは音楽で何を表現し何を聴衆に語らなければならないかという思索を重ね、研究と練習を積み重ねて行った努力型の人だと言えると思います。作曲家プーランクはリパッティを「神のような精神をもった芸術家」と評しています。

最初にお聴きいただきますのは、シューマンのピアノ協奏曲です。名ピアニストでもあったシューマンが作曲した歌心あふれるすばらしいピアノ協奏曲で多くのピアニストが名演を残していますが。リパッティの演奏は今なおこの曲の演奏のベストであると言われます。共演はカラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団。演奏時間は約29分です。

次にお聴きいただくのは、グリーグのピアノ協奏曲です。一般的にピアノ協奏曲の名曲と言われるのは、モーツァルトの20番から27番までの協奏曲、ベートーヴェンの3番から5番までの協奏曲、ショパンの2つの協奏曲、シューマンの協奏曲、グリーグの協奏曲、ブラームスの2番の協奏曲、チャイコフスキーの協奏曲、ラフマニノフの2番の協奏曲あたりでしょうか。そのなかでもグリーグのピアノ協奏曲は古典派やロマン派の協奏曲やロシアの作曲家が作曲した協奏曲とは趣の異なった、独特の表情をもった協奏曲と言えるのではないでしょうか。共演はガリエラ指揮フィルハーモニア管弦楽団。演奏時間は約29分です。

ここで少し休憩をいただきます。

後半最初の曲は、ショパンのワルツ集です。リパッティの演奏はシューマンのピアノ協奏曲の時にも同じことを言いましたが、今なおこの曲の演奏のベストと言えるでしょう。特に本日は音が良いと言われるフランス盤を用意しましたので、リパッティのタッチの美しさも楽しんでいただけると思います。演奏時間は約45分です。

最後にお聴きいただくのはモーツァルトのピアノ協奏曲第21番です。いままでお聴きいただいた曲はすべてスタジオ録音ですが、この曲はライブ録音です。やり直しのきかないライブで、いきいきとすばらしい技巧でピアノを引きこなすリパッティの演奏に胸がすく思いをされる方もたくさんおられると思います。共演はカラヤン指揮ルツェルン音楽祭管弦楽団。演奏時間は約29分です。

本日もアンコール曲を用意しました。第2次大戦後、5年足らずでリパッティはその生涯を終えますが、1946年にハスキルが自らの代役としてコンサートに招いたことから、リパッティは音楽活動を再開することができました。ピアニスト同士の友情があったのだと思います。アンコール曲は、そのハスキルの演奏をお聴きいただきます。モーツァルトの第10番のピアノ・ソナタです。演奏時間は約18分です。

本日は、長い時間レコードコンサートにおつき合いいただき、ありがとうございました。今後とも、このレコードコンサートをご愛顧いただきますよう、よろしくお願い致します。また、プログラムの一番下にありますように、私のホームページも是非ご覧下さい。よろしくお願いします。