本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても一般の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。

今回は、「チューリップラベル、赤STEREOで聴く、ヴィルヘルム・ケンプ」ということでケンプの名演奏をグラモフォンのプレミアム盤でたっぷりと楽しんでいただこうと思います。なお、チューリップラベルというのはラベルのふちにチューリップの花で円を描いているもので、グラモフォンのプレミアム盤です。さらにジャケット表面の上部に曲目や演奏家名の表示がありますが、その下のところのSTEREOが黄色でなく赤色になっているのが赤STEREOで、よりプレミアム性の高い盤となっています。

ヴィルヘルム・ケンプは、1895年にドイツのユーテルボークに生まれました。教会オルガニストの家庭に生まれ、幼い頃からピアノとオルガンを学びました。1918年ソリストとしてデヴュ−、以後60年余り演奏活動を行いました。その間ケンプはバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンそしてロマン派の音楽に名演を残しています。

ケンプはバックハウスのように熱心に技巧練習に励むことがなかったため、完璧な技巧による瑕疵のない演奏が求められる時代になると、彼の即興的なファンタジーや高い精神性の音楽づくりが時代に即さないものとなって来ました。私自身の感想を言えば、最晩年のシューベルトの全集録音は良い演奏であるとは言えませんが、本日お聴きいただく、モーツァルトとベートーヴェンの演奏は技巧的にもすばらしく、先程述べました、即興的ファンタジーや高い精神性もある優れた演奏であると思います。

最初にお聴きいただくのは、ベートーヴェンの三大ピアノ・ソナタ「悲愴」「月光」「熱情」です。ベートーヴェンはピアノ・ソナタを32曲作曲しており、特にこの3曲は内容が充実しており、標題音楽ということもあり親しまれています。ピアノ・ソナタには他に「葬送行進曲」「田園」「テンペスト」「ワルトシュタイン」「告別」「ハンマークラヴィーア」などの標題のついた曲があります。それではケンプの独奏でお聴きいただきます。演奏時間は約55分です。

ここで少し休憩をいただきます。

次にお聴きいただくのは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番と第4番です。ベートーヴェンはピアノ協奏曲を5曲作曲していますが、第5番「皇帝」の次に親しまれているのが、この第4番ではないでしょうか。ケンプの演奏は、バックハウスの演奏と共に長年親しまれていました。本日は聴かれる機会の少ない第2番と共にお聴きいただきます。共演は、ライトナー指揮ベルリン・フィル。演奏時間は約61分です。

ここで少し休憩をいただきます。

最後にお聴きいただくのは、モーツアルトのピアノ協奏曲第23番と第24番です。モーツァルトのピアノ協奏曲は第20番から第27番までがよく演奏されますが、その中で演奏時間が最も短く愛らしい曲が第23番であると思います。また第24番は、短調の曲で深い感動を呼び起こす曲であると思います。私は、第23番の演奏はケンプの演奏が今なお最も優れたものだと思います。第24番については個人的には、カサドシュがセルと共演したものが好きですが、ケンプの演奏もすばらしいものです。共演は、ライトナー指揮バンベルク交響楽団。演奏時間は約57分です。

本日もアンコール曲を用意しました。本日は古典派の音楽を堪能されたと思いますので、アンコール曲は趣の異なるイギリス音楽をお聴きいただこうと思います。ヴォ−ン・ウイリアムズ作曲の「グリーンスリーヴズによる幻想曲」です。演奏は、モートン・グールド指揮彼の交響楽団。演奏時間は約5分です。

本日は、長い時間レコードコンサートにおつき合いいただき、ありがとうございました。今後とも、このレコードコンサートをご愛顧いただきますよう、よろしくお願い致します。また、プログラムの一番下にありますように、私のホームページも是非ご覧下さい。よろしくお願いします。