本日はお忙しい中、レコード・コンサートに来ていただきありがとうございます。第1回ということで、どのような構成にしようかといろいろ考え、今回はチェロの大家の聴き比べが良いのではないかと思い、パブロ・カザルスとピエール・フルニエの名盤をいくつか聴いていただくことにしました。
 カザルスは1876年生まれで1973年没、フルニエは1906年生まれで1986年没、共に没後15年以上たっていますが、今でもチェロ演奏と言えば、カザルスのような豪快な演奏かフルニエのようなセンスのよい心にしみる演奏のどちらかと言うように、2つの代表的なチェロの演奏方法となっています。
 最初に、2人の演奏を比較していただくために、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番第1楽章を、2人の演奏を続けて聴いていただくことにします。カザルスの豪放磊落さ、フルニエの繊細緻密さがよくわかる演奏で、共に名演です。カザルスの些事に捕われない熱い演奏は私達に勇気を与えてくれますし、フルニエの静かで落ち着いた演奏は私達の疲れた心を休めてくれます。それぞれ3分弱の演奏です。
 次は、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第1番をカザルスの演奏でお聴きいただきます。ベートーヴェン26才のときの作品で、美しい旋律が泉のように溢れ出る曲です。今日お聴きいただくのはルドルフ・ゼルキンと共演したレコードです。ゼルキンのきらきらと輝くピアノの音は、カザルスの豪快なチェロの音に絶妙の間の手を入れているようです。演奏時間は約26分です。
 今度は、フルニエの演奏で、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第2番をお聴きいただきます。第1番とほぼ同じ時期に作曲された作品で、第1番同様美しい旋律が続きます。今日は、ベートーヴェンのピアノ曲の演奏では高い評価のあるピアニスト、ウィルヘルム・ケンプとの共演のレコードをお聴きいただきます。フルニエとケンプの落ち着いた、味わいのある演奏は、私達の心にほの明るい灯を灯してくれますので、じっくりとお聴き下さい。演奏時間は約22分です。
 ここで、10分間休憩をいただきます。
 後半最初の曲は、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番です。ブラームス27才の時の作品で、特に第2楽章は若き日のブラームスの情熱を感じさせます。カザルスの他のメンバーは、ヴァイオリンがアイザック・スターンとアレクサンダー・シュナイダー、ヴィオラがミルトン・カティムスとミルトン・トーマス、チェロがマドリーヌ・フォレイです。カザルスは、スターンと他にシューベルトの弦楽五重奏曲をほぼ同時期に録音していますが、こちらもすばらしい演奏になっています。演奏時間は約38分です。
 今度は、フルニエの演奏をお聴きいただきます。ショパンのチェロ・ソナタです。ショパンはピアノの曲で有名ですが、チェロ・ソナタと序奏と華麗なポロネーズは共に旋律の美しいチェロの曲です。共にフルニエの名演がありますが、今日はチェロ・ソナタをお聴きいただきます。伴奏はジャン.フォンダ。演奏時間は約24分です。
 コンサートの最後にアンコール曲を用意致しました。ヌヴーのソロによるショーソンの詩曲です。1946年の古い録音ですが、今でも比肩するものがない名盤です。伴奏は、イザイ・ドブロウェン指揮フィルハーモニア管弦楽団。演奏時間は約14分です。
 本日は長時間にわたるレコード・コンサートにおつき合いいただき本当にありがとうございました。今後も定期的にこのような催しを実施する予定ですので、その折には是非ご参加下さい。また、プログラムの一番下にありますように、私のホームページもご覧下さい。よろしくお願いします。
 ありがとうございました。