本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても一般の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。

今回は、「不朽の名盤 セラフィンのボエーム」ということでプッチーニのボエームをトゥリオ.セラフィン指揮ローマ聖チェチーリア音学院管弦楽団、合唱団の演奏。レナータ・テバルディやカルロ・ベルゴンツィ他の名歌手との共演でお聴きいただきます。また本日は、DECCAの優秀な録音でお聴きいただきますので、オペラのすばらしい名演をたっぷりと楽しんでいただけると思います。

トゥリオ・セラフィンは、1878年にイタリアのロッタノーヴァ・ディ・カヴァルゼーレに生まれました。最初はヴァイオリンを学び、ミラノ・スカラ座管弦楽団に所属しましたが、作曲を学んだ後に1898年に指揮者としてデヴューします。その後イタリア各地の劇場に招かれ、1909年にはスカラ座でデヴューします。その後アメリカとイタリアの歌劇場の指揮者を歴任し、1950〜60年当時は今世紀最高のイタリア・オペラ指揮者として君臨しました。

本日お聴きいただく、プッチーニ作曲のボエームは彼の代表作であり、またオペラ作品の中でも身近に感じられる数少ないストーリーのように思います。若い芸術家たちの気ままで自由であるが充実した生活と悲劇的結末に終わるラヴストーリーを、うまく約2時間の歌劇にまとめたプッチーニは流石だと思います。登場人物もみな生き生きと描かれていますし、4幕の時間配分がバランスよくなされており、初めてオペラを聴かれる方にまずお勧めするべきは、このボエームではないかと思います。本日は私の解説をお聞きいただきながら、1幕ずつお聴きいただきます。

それではまず第1幕。詩人のロドルフォ、画家のマルチェルロ、哲学者のコルリーネ、音楽家のショーナルが住むラテン区にある屋根裏部屋。最初4人の芸術家の経済的に苦しいが、4人が力を合わせて助け合って生活しているところが描かれます。借金取りがやってきますが、4人の罠にはまり追い返されてしまいます。その後4人はカフェ・モミュスに繰り出すことになりますが、ロドルフォは3人に下で待つようにと言い、仕事を続けます。やがてミミが現れ、蝋燭の火をもらえないかと言います。気分が悪くなって倒れたミミを介抱し、一緒に紛失したミミの部屋の鍵を捜すロドルフォにミミは好感を持ち、自身の身の上話しをします。一緒に外出しようとのロドルフォの誘いにミミは応じ、5人でカフェ・モミュスに出掛けることになります。第1幕の中では、「冷たい手を」、「私の名はミミ」というアリアがよく知られており、よく単独で歌われます。演奏時間は約36分です。

第2幕は、カフェ・モニュスの前。ロドルフォがミミに帽子をプレゼントし、ミミは他の3人に見せ「恋は蜂蜜よりももっと甘い」と歌います。マルチェルロはムゼッタと別れたばかりだったので気分を悪くしますが、しばらくしてムゼッタが老人アルチンドロを伴って現れます。マルチェルロはムゼッタを無視しますが、ムゼッタは、「私が町を歩くと、みんなは立ち止まって私を見る」(ムゼッタのワルツ)と歌い、アルチンドロに靴を買いに行くようにと言い付け、マルチェルロと抱き合います。2人が仲直りし楽しい雰囲気となりますが、勘定書を見て余りの高さに6人は吃驚します。ムゼッタは自分たちの勘定とマルチェルロたちの勘定を合わせ、アルチンドロの席に置き、6人は立ち去ります。靴を買って戻って来たアルチンドロは勘定書を見て驚きます。演奏時間は約20分です。

第3幕、オルレアン街道にある、パリに通じるアンフェール門。雪の降る2月の早朝。ミミはマルチェルロが働いている居酒屋を訪ね、最近ロドルフォとうまく行っていないことを話します。しばらくしてロドルフォが現れたので、ミミは木陰に隠れます。最初ロドルフォは「ミミは浮気女だから別れる」というが、マルチェルロが疑問を持つと、今の生活では病気のミミが助からないので世界で一番愛している女性と別れると説明します。咳と泣き声でミミに気付いたロドルフォは、ミミに駆け寄り、しっかり抱き合います。一方マルチェルロはムゼッタが居酒屋で奔放に振る舞うのに我慢できず、言い争い別れを告げます。演奏時間は約26分です。

第4幕、第1幕と同じ屋根裏部屋。ロドルフオとマルチェルロは、それぞれの別れた恋人のことが忘れられません。ショーナルとコルリーネは、粗末な食事を持って帰ると、ダンスをしたり、決闘のまねをしたりして楽しくしています。そこにムゼッタが「ミミの具合が悪い」とミミを屋根裏部屋に連れて来ます。ムゼッタは、「ミミはロドルフォのもとで死にたいと、世話になっていた子爵の息子のもとから逃げて来た」と話します。友人たちの心遣いでロドルフォとミミはしばし2人だけの時間を過ごします。皆が帰って来て、ムゼッタはミミにマフラーを渡します。ミミはそれを受け取り、喜び、眠りに落ちます。ミミは眠るように事切れますが、しばらくしてそのことを知ったロドルフォは、ミミに駆け寄り、「ミミ!ミミ!」と叫び号泣し、幕となります。演奏時間は約29分です。

本日もアンコール曲を用意しました。編曲ものがふたつです。ひとつはトランペットの名手モーリス・アンドレが超絶技巧を駆使してオペラのアリアを演奏したものです。日本語でのタイトルも「超!超絶トランペット」と言われていました。曲目は、レハールの喜歌劇「ほほえみの国」から『君はわが心のすべて』、ベルリーニの歌劇「ノルマ」から『清らかな女神よ』、モーツァルトの歌劇「魔笛」より『復しゅうの心は地獄のように胸に燃え』と『若者よ恐れるな』、ビゼーの歌劇「真珠取り」より『耳に残るは君の歌声』です。モーリス・アンドレのトランペット、共演はマーク・スースロ指揮モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団です。もうひとつは、グレン・グールドのピアノ演奏によるワグナーのジークフリート牧歌です。

本日は、長い時間レコードコンサートにおつき合いいただき、ありがとうございました。今後とも、このレコードコンサートをご愛顧いただきますよう、よろしくお願い致します。また、プログラムの一番下にありますように、私のホームページも是非ご覧下さい。よろしくお願いします。