本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても普通の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。

今回は、「リヒターのマタイ受難曲」ということで、バッハの音楽の解釈では他の追随を許さず、また自らミュンヘン・バッハ管弦楽団を組織し多くの名演を残した、カール・リヒターが指揮した「マタイ受難曲」をお聴きいただきます。

カール・リヒターは、1926年にドイツ(ザクセン)のブラウエンに生まれました。1946年からライプチヒの音楽大学で学び、1949年に演奏家の資格を取るとともに聖トマス教会のオルガン奏者に就任しました。1951年には活動の場をミュンヘンに移し、ミュンヘン・バッハ管弦楽団及び合唱団を組織します。リヒターは、バッハの音楽を中心にバロック音楽やモーツァルトの音楽で名演を残しましたが、3度目の来日の直前、1981年、54才の若さで急死しました。

本日お聴きいただく「マタイ受難曲」は、バッハの最高傑作であり、宗教音楽の最高傑作であります。この曲が長大であるのに飽きることがないのは、魅力的なコラールが最後まで続くからと言われています。そのためには個性的なソリストと劇的でしかも統率の取れた合唱が必要であると思いますが、このレコードでは、ゼーフリート、テッパー、ヘフリガー、フッッシャー=ディースカウ、エンゲンなどのソリストもすばらしいのですが、ミュンヘン・バッハ合唱団の心にしみる合唱も聞きどころであると思います。

この曲にはいくつかの聞きどころがあります。最初の曲と最後の曲はともに重厚な合唱が心にしみて美しいものです。それ以外の聞きどころでは、第47曲の旋律の美しいヴァイオリン独奏が入るアルトのアリア〈憐みたまえ、わが神よ〉が特にすばらしいです。他に第66曲のアリア〈きたれ、甘き十字架〉や第75曲のアリア〈わが心よ、おのれを潔めよ〉や第16曲、第21曲、第23曲、第44曲、第53曲、第63曲、第72曲で繰り返しその旋律が現れる受難コラールも聞きどころであると思います。解説はこの位にして、演奏を聴いていただきましょう。

本日はこの大曲を1部と2部の間に10分間だけ休憩を入れて、お聴きいただきます。曲の途中に解説は入れず、最後に少し話をすることに致します。第1部は約87分、第2部は約111分です。

長大な曲におつき合いいただき、ありがとうございました。前回のコンサートでは、フルトヴェングラーの重厚な曲を3曲お聞きいただくコンサートでしたので、最初から最後までお聞きいただいた方はおられなかったのですが、本日は1名おられました。長い時間おつき合いいただき、本当にありがとうございました。バッハは他に、いくつかの長大な宗教曲を作曲していますが、「ヨハネ受難曲」や「ロ短調ミサ曲」はリヒターが名演を残しています。どちらも名演と呼ばれていますので、多くの方からリクエストがあり、オリジナルに近い音の良いレコードが入手できましたら、お聴きいただこうかと思っています。また、ブランデンブルク協奏曲や管弦楽組曲などの器楽曲のリクエストもお待ちしています。
本日もアンコール曲を用意しました。ヴィヴァルディの四季から冬と春をお聴きいただきます。オーケストラは、イ・ムジチ合奏団ですが、同合奏団はイタリアの団体で、リヒター指揮ミュンヘン・バッハ合奏団と共に、1950年代終わりから1980年代初頭までのバロックブームを牽引した団体であると思います。独奏ヴァイオリンはフェリックス・アーヨです。

本日は、大曲におつき合いいただきありがとうございました。私のレコードコンサートは少し聴いていただくだけでも、歓迎致しますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。