本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても普通の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。
今回は、「決定盤 ベーム指揮ウィーン・フィルのベートーヴェン」ということで、1980年に亡くなるまでクラシック音楽ファンを魅了し続けた、カール・ベーム指揮でベートーヴェンの演奏をお聴きいただきます。決定盤と敢えてつけたのは、ベームの指揮もすばらしいのですが、当時のグラモフォンの録音技術が優れているからです。これを機会に当時のベームの名演は「田園」だけでなく、他のすばらしい演奏があることを知っていただけたらと思います。
カール・ベームは、1894年オーストリアのグラーツに生まれました。グラーツ大学で法律を学びながら、指揮者シャルクの紹介でマンディチェフスキーに音楽を学びます。1917年、グラーツ歌劇場でデヴュー。ムックの紹介でワルターとの親交が始まります。1921年、ワルターの招きにより、バイエルン歌劇場の指揮者に転任。その後、ドレスデン国立歌劇場音楽総監督、ウィーン国立歌劇場を歴任します。ドイツ・オーストリア敗戦後に一時活動を中止しますが、1947年に復帰します。戦後は、ウィーン・フィルやベルリン・フィルで多くの名演を残しますが、管弦楽だけでなくオペラでも多くのすぐれた功績を残しました。バイロイト音楽祭でのワーグナーの演奏、シュワルツコップ、ルートヴィヒ、ニルソンなどの女性歌手の紹介などがそうです。
本日お聴きいただくベートーヴェンの3つの交響曲と第4番のピアノ協奏曲は、いずれもベートーヴェンの音楽が十分に楽しめる作品ですが、特にベームの解釈によってその魅力が十二分に引き出されており、しかも1970年代のグラモフォンの録音技術がより迫力のある、すばらしい音質で聴けるようにしています。わたし個人の感想ですが、アナログ時代では、デッカやEMIなどイギリスのレコード会社が良いとされますが、わたしは1970年代のドイツグラモフォンの音質が好きです。
前置きが長くなりました。最初にお聴きいただくのは、ピアノ協奏曲第4番です。第5番の『皇帝』に比べると規模が小さくなりますが、美しい旋律が至る所に溢れています。わたしがこの曲を初めて聴いたのはやはりこのポリーニ、ベーム盤でした。その後、バックハウスやケンプの演奏も良いと思いましたが、やはりベームの伴奏が優れているこのレコードが一番良いのではないかと思っています。それではピアノ、マウリツィオ・ポリーニ、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルの演奏でお聴き下さい。演奏時間は約32分です。
次にお聴きいただくのは、交響曲第4番です。英雄と運命という内容の充実した、人気の高い交響曲の間に作曲されたのですが、シューマンは、「2人の北欧神話の巨人(英雄と運命)の間にはさまれたギリシャの乙女」とこの曲と紹介していたようです。この曲の名演としてカルロス・クライバーのライブ盤がありますが、ベームもすぐれた演奏であると思います。ではカール・ベーム指揮ウィーン・フィルの演奏でお聴きいただきます。演奏時間は約35分です。
ここで約10分、休憩をいただきます。
後半最初にお聴きいただくのは、交響曲第5番「運命」です。この曲は多くの演奏家がレコードを残しています。中でもフルトヴェングラーやカルロス・クライバーが力のこもった感動的な演奏を残していますが、ベームの演奏はこの作品の力強さも残しながら、明晰で輪郭をはっきりさせたものとなっており、一味違った「運命」となっています。それではカール・ベーム指揮ウィーン・フィルの演奏でお聴き下さい。演奏時間は約35分です。
プログラムの最後にお聴きいただくのは、交響曲第3番「英雄」です。この曲も多くの演奏が残っていますが、わたしの好みになってしまうのかもしれませんが、やはりフルトヴェングラーの2枚のレコードが優れているのではないでしょうか。1952年にウィーン・フィルを指揮したレコードとウラニアのエロイカと言われるレコードです。ベームの演奏は「運命」と同様、曲自体が持っている力強さを残しながら、明晰な演奏をすることでこの曲の今まで知らなかった魅力をうまく引き出しているように思います。それではカール・ベーム指揮ウィーン・フィルの演奏でお聴き下さい。演奏時間は約49分です。
本日もアンコール曲を用意させていただきました。時間に余裕がありますので、2曲お聴きいただきます。1曲目は、以前(第2回)にもお聴きいただいたことがある、ウラッハがウィーンコンツェルトハウス四重奏団と共演したクラリネット五重奏曲です。より音質の良いレコードが手に入りましたので、お聴きいただきます。2曲目は、もう一度ベームの指揮による演奏をお聴きいただきます。喜歌劇「こうもり」序曲です。演奏時間は2曲合わせて約50分です。
本日も、レコードコンサートにおつき合いいただきありがとうございました。ベームは「こうもり」の他にも歌劇の名演を残していますので、それらも積極的に取り上げて行こうと考えていますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。