本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても一般の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。

今回は、「不朽の名盤 スウィトナーの魔笛」ということでモーツァルトの魔笛をオトマール・スウィトナー指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団、ライプツィヒ放送合唱団の演奏。ペーター・シュライアー、テオ・アダム、ギュンター・ライプ他の名歌手との共演でお聴きいただきます。
オトマール・スイトナーは、1922年にインスブルックに生まれました。最初はピアノを学んでいましたが、クレメンス・クラウスに才能を認められ、指揮者としての教えを受けました。1960年にドレスデン国立歌劇場及び東ベルリンの国立歌劇場の主席指揮者となりました。スウィトナーは当時、東ドイツの指揮者であったため、西ヨーロッパや西側諸国で指揮することが余りなく、日本では1980年頃にドレスデン国立歌劇場と共に来日し、この「魔笛」を演奏してから知られるようになったように思います。その後、スウィトナーはNHK交響楽団の常任指揮者を長らく勤めました。本日は、モーツァルトの演奏には定評のあるスウィトナーが1970年に録音した、「魔笛」をお聴きいただきます。
本日お聴きいただく、「魔笛」はモーツァルトの代表作です。モーツァルトには4つのすぐれたオペラがあり、4大オペラと呼ばれています。年代順に言いますと、「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コシ・ファン・トゥッテ」「魔笛」となりますが、「魔笛」はこれらの中でも特におとぎ話的なストーリーで多くの人に愛されているオペラになっています。とにかく多彩な登場人物がそれぞれの個性に合った歌を披露して行くのですが、私個人の趣味では、特にパパゲーノ、夜の女王の歌に引かれます。夜の女王の《復讐の心は地獄のように》《若者よ恐れるな》、パパゲーノの《俺は鳥刺し》《娘か、可愛い女房があれば》は本当にすばらしいと思います。興味深い場景が連続し、歌に酔い、いつしかフィナーレを迎えるというのが、この「魔笛」ではないでしょうか。本日は私の解説をお聞きいただきながら、全2幕を休憩をはさんで1幕ずつ、お聴きいただきます。
それではまず第1幕。岩山の中に王子タミ−ノが大蛇に追われて登場します。タミーノは矢がなくなり、助けを求めて気を失います。そこに夜の女王の3人の侍女が現れ、大蛇を槍で殺してしまいます。タミーノは正気に戻り、大蛇が死んでいるのに気付きます。しばらくしてパパゲーノが現れます。パパゲーノは自分が大蛇を殺したと言いますが、3人の侍女が現れ、嘘を咎められて、口に金の錠前をはめられてしまいます。3人の次女はタミーノにパミーナの絵姿を見せ悪者にさらわれたと知らせます。タミーノはパミーナの母親の夜の女王が娘を奪われた苦しみと怒りを訴えましたので、決意を固めてパパゲーノと共にパミーナの救出に向かうことになります。3人の侍女からタミーノは魔笛を、パパゲーノは魔法の鈴が与えられます。悪者ザラストロの住む城には、3人の少年が案内することになります。ザラストロの城では、モノスタトスによってパミーナが捕われていました。モノスタトスがパミーナに詰め寄ろうとしているところにパパゲーノが現れ、パパゲーノはパミーナを救い出します。一方、タミーノは3人の少年の案内で聖なる森の神殿に行き、弁者(僧侶)と問答を行います。弁者と問答をして、タミーノは、悪者と思い込んでいたザラストロが高徳の僧で、夜の女王が邪悪な心の持ち主であることを知ります。タミーノはモノスタトスに捕われ、ザラストロのところへ連れて行かれますが、モノスタトスの悪事を見抜いたザラストロに助けられます。ザラストロは、パパゲーノに助けられたパミーナと共に試練を受けるのなら、一緒にさせてやろうと言います。演奏時間は約72分です。

ここで少し休憩をいただきます。

第2幕は、聖なる森の中で物語は始まります。ザラストロが、僧侶たちと共に現れます。ザラストロは僧侶たちに、タミーノに試練を受けさせ試練に耐えたら、タミーノの願いをかなえると言います。パパゲーノも僧侶に自分に似合いの娘を与えると言われたので、しぶしぶタミーノと共に試練を受けることになります。タミーノの最初の試練は、無言の行に対する夜の女王の3人の侍女による誘惑でしたが、タミーノはそれを退けます。その頃パミーナは、母親の夜の女王から、ザラストロを殺せと命じられます。ここで有名な《復讐の心は地獄のように》が歌われます。パミーナが母親の命令に悩んでいるとモノスタトスが現れ、今のことをザラストロに話すと脅します。そこにザラストロが現れ、ザラストロはモノスタトスを追放しパミーナを慰めます。タミーノとパパゲーノは引き続き、無言の行を続けていましたが、ひとりの老婆が現れ、パパゲーノに話し掛けます。老婆は謎めいた言葉を残して消えます。3人の少年が現れふたりにごちそうを置いて行ったので、タミーノは笛を吹きます。その笛の音にひかれてパミーナがやってきますが、タミーノが沈黙を守ったままなので、タミーノの愛を得られないのなら、自分は自害すると言います。パミーナは半狂乱になりますが、3人の少年に励まされ自分を取り戻します。タミーノは火攻め、水攻めの試練を受けようとしていましたが、そこにパミーナが現れ、ふたり一緒に試練を受けることになります。タミーノは魔法の笛を吹き鳴らして試練を乗り越え、人々の祝福を受けます。一方、パパゲーノも老婆から変身した、パパゲーナと会えないため一時は絶望して打ちのめされますが、3人の少年に連れられたパパゲーナに会うと喜んで手を取り合って抱き合います。夜の女王、3人の侍女、モノスタトスが復讐のためにやってきますが、雷鳴と雷光に追い散らされます。その後には輝く太陽の世界が現れ、イシスとオシリスの神を讃えて終幕となります。演奏時間は約82分です。

このレコードをこうしてじっくり聞いてみて、強く感じたことは、このオペラの主人公はパパゲーノであり、その出来次第で演奏の善し悪しが決まるのではないかということです。このコンサートの前に自宅でベーム盤の魔笛を聴いてみたのですが、パパゲーノ役のフィッシャー=ディースカウの歌はうまいのかもしれませんが、語りの部分では、このレコードのギュンター・ライプの方が優れているように思います。魔笛は、ジングシュピール(歌芝居)の代表的なものと言われますが、このレコードはパパゲーノをはじめすべての出演者の語りが優れているため、いつまでも魔笛の名盤として聴き継がれて行くことと思います。

本日もアンコール曲を用意しました。オペラの名曲の後は、器楽曲の名曲をお聞きいただきます。ドヴォルザークのチェロ協奏曲です。チェロはパブロ・カザルス、ジョージ・セル指揮チェコ・フィルの演奏でお聴き下さい。

本日は、長い時間レコードコンサートにおつき合いいただき、ありがとうございました。今後とも、このレコードコンサートをご愛顧いただきますよう、よろしくお願い致します。また、プログラムの一番下にありますように、私のホームページも是非ご覧下さい。よろしくお願いします。