本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても普通の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。

今回は、「いぶし銀の魅力 ジョージ.セル」ということで、ジョージ・セルがクリーヴランド管弦楽団を指揮した、プロの演奏家も唸らせたと言われる名演をお聴きいただきます。

ジョージ・セルは、1897年ハンガリーのブタペストに生まれました。3才の頃にウィーンに移りピアノを学び、11才の頃にはリサイタルをひらきます。16才の頃には、急病になった指揮者の代わりにはじめて指揮して、指揮者として頭角を現します。その後、名指揮者でもあるR.シュトラウスに認められ、彼のアシスタントを勤めます。1940年頃からアメリカを中心に活動するようになり、1946年からラインスドルフの後を受け、クリーヴランド管弦楽団の音楽監督になります。そしてその後20数年にわたってこのオーケストラを指揮し、世界第一級のオーケストラにしました。セルのことは、プロの演奏家も一目置く優れた演奏家と言われており、特にカラヤンはセルのことを尊敬していたようです。「いぶし銀の魅力」と言いましたが、実際のところはスコアに忠実な厳格な解釈なのかもしれません。そのあたりのことは実演をお聴きになられて、ご自身でご判断して下さい。本日は1960年から最晩年の1970年の頃のジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏をお聴きいただきます。

本日、選んだレコードはモーツァルトのピアノ協奏曲第27番以外はいずれも華やかさはなくまた重厚な調べというものも余りなく、渋いイメージの曲と言えるのですが、耳になじむ聴きやすい演奏であり、折に触れて聴きたくなる優れたものであると思います。それは一重にセルの解釈が優れているからであると思います。

最初にお聴きいただくのは、モーツァルトのピアノ協奏曲第24番と第27番です。第24番の第1楽章、第3楽章が暗く沈んだ感じのするのですが、その分第2楽章の美しさが際立つように思います。また第27番は天国的な調べが随所に見られる、晩年のモーツァルトの心境を表したとも言われている曲です。ピアノ独奏はフランスの名ピアニストロベール・カサドシュでお聴き下さい。演奏時間は合わせて、約60分です。

次にお聴きいただくのは、ブラームスの交響曲第3番です。ブラームスは4つの交響曲を残していますが、セルの優れた解釈はこの地味な感じのする曲に魅力ある鈍色の光を与えているように思います。ハイドンの主題による変奏曲をプログラムに入れていますが、時間の都合で割愛させていただきます。ご了承下さい。演奏時間は約35分です。
ここで少し休憩をいただきます。

後半最初にお聴きいただくのは、ドヴォルザークの交響曲第7番です。ドヴォルザークは9曲の交響曲を残しており、第1番から第6番までの交響曲は余り演奏されません。第7番は民族的で土の香のする曲ですが、セルの演奏は洗練されていて一味違い、他の演奏の追随を許さないように思われます。演奏時間は約36分です。

次にお聴きいただくのは、ドヴォルザークのチェロ協奏曲です。セルはカザルスとこの曲の名演を残していますが、いずれもすばらしい演奏です。このレコードで共演しているフルニエは多くの名演を残していますが、特にこの演奏ではセルの伴奏がすばらしく、フルニエのレコードの中でも最も優れたものの一つと言われています。演奏時間は約37分です。
プログラムの最後にお聴きいただくのは、ドヴォルザークの交響曲第8番とスラヴ舞曲第10番と第3番です。交響曲第8番は先程お聴きいただいた第7番を録音した頃にも入れており、甲乙付け難いと言われています。このレコードはセルの最晩年の録音で、セルは万国博で来日し指揮した後しばらくして亡くなります。スラヴ舞曲の2曲も小曲ですが心に残る名演奏だと思います。演奏時間は約49分です。

本日もアンコール曲を用意させていただきました。ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団の演奏でモーツァルトのオペラの序曲をお聴きいただきます。歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」序曲です。演奏時間は約5分です。

本日も、レコードコンサートにおつき合いいただきありがとうございました。私のレコードコンサートは少し聴いていただくだけでも、歓迎致しますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。