本日はお忙しい中、レコード・コンサートに来ていただきありがとうございます。第1回は、チェロの大家カザルスとフルニエの名演をお聴きいただきましたが、今回はクラリネットの名手レオポルド・ウラッハがモーツァルトの曲を演奏したレコードのいくつか聴いていただくことにしました。
 ウラッハは1902年生まれで、1923年にウィーンの音楽アカデミーを首席で卒業しウィーン・フィルに入団、1928年から1957年の春に死去するまで、ウィーン・フィルの首席奏者をつとめました。その間に、ウィーン・フィルハーモニー木管グループを主宰したり、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団等と共に多くの名演をレコードに残しています。
 一般的にウラッハのクラリネットの音色は柔らかく味わいがあり、その天衣無縫の技は今でも追随を許さない高みにあると言われています。レジナルド・ケル、カール・ライスター、ジェルヴァース・ド・ペイエ等、クラリネットの名演奏家は多くいて、その音色に引かれますが、ウラッハのような人にやすらぎを与える境地までいたっていないように思います。
 今日は、そのウラッハの演奏の中でも最もすばらしいモーツァルトの作品の演奏をお聴きいただきます。ウラッハのクラリネットの音色は、明るく天真爛漫なので、翳りのあるブラームスやパッションのあるロマン派の曲の演奏には少し物足りなさを感じますが、モーツァルトやベートーヴェンの作品の演奏については、何も言うことがないすばらしい演奏になっています。
 最初にお聴きいただくのは、1949年に録音された、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットのための協奏交響曲です。自筆稿が残っていないこととソロのパートを他人が勝手に書き換えた可能性から、モーツァルト自身の作品でないと言われていますが、曲自体は本当にすばらしい曲です。ウラッハ以外のソロは、オーボエがハンス・カメシュ、ホルンがゴットフリート・フォン・フライベルク、ファゴットがカール・エールベルガー、指揮はヘンリー・スウォボダ、オーケストラはウィーン国立歌劇場室内管弦楽団です。本日はその第2楽章をお送りします。演奏時間は約10分です。
 次は、クラリネット五重奏曲をお送りします。後でお聴きいただくクラリネット協奏曲と共にクラリネットのソロ演奏が満喫できる名曲です。ウラッハは、実にゆっくりとしたテンポでモーツァルトの美しい調べを心行くまで味わわせてくれます。特に第2楽章は、美辞麗句をいくつ連ねても表現できないくらいすばらしい演奏です。共演は、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団。演奏時間は約37分です。
 ここで、10分間休憩をいただきます。
 後半最初の曲は、セレナード第12番「ナハトムジーク」です。モーツァルトは、この他にも管楽器が主役のセレナードやディヴェルティメントの名曲を多く残しています。「グラン・パルティータ」は、その頂点にあるものと言えます。演奏するのは、ウィーン・フィルハーモニー木管グループ。その一員としてウラッハの名があります。リーダーであるウラッハは、要所要所で、クラリネットで甘い旋律を奏でてくれます。特に第2楽章は美しい旋律が続きます。演奏時間は約18分です。
 今度は、クラリネット協奏曲をお聴きいただきます。ゆったりとした第2楽章もすばらしいですが、ウラッハの技巧を堪能できる第3楽章はさらにすばらしいので、じっくりお聴き下さい。指揮はアルトゥール・ロジンスキ、オーケストラはウィーン国立歌劇場管弦楽団です。演奏時間は約31分です。
 コンサートの最後に、アンコール曲を用意致しました。ペーター・リバールのソロによるヴィオッティのヴァイオリン協奏曲第22番の第2楽章です。今から20年程前、NHK-FMのクラシック番組のテーマ曲に使われていた曲です。伴奏は、クレメンス・ダヒンデン指揮ウィーン交響楽団です。演奏時間は約8分です。
 本日は、長時間にわたるレコード・コンサートにおつき合いいただき本当にありがとうございました。今後とも、このレコード・コンサートをご愛顧いただきますようよろしくお願い致します。また、プログラムの一番下にありますように私のホームページもご覧下さい。よろしくお願いします。