本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても普通の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。
今回は、「Period時代の録音を中心にシュタルケルを聴く」ということで、 シュタルケルのピリオドレーベルに録音した名演を中心にお聴きいただきます。 ヤーノシュ・シュタルケルは、1924年ハンガリーのブタペストに生まれました。7才でブタペスト音楽院に入学を許され、11才でソロ・デヴューをしました。1946年には祖国を離れ、ヨーロッパ各地で演奏を行います。1948年アンタル・ドラティの招きでダラス交響楽団の主席チェリストに就任します。1950年にはオーナーがハンガリー人のレーベルピリオドと契約します。このレーベルで録音したコダーイの無伴奏チェロ・ソナタがセンセーションを巻き起こし、注目を集めることになります。 私はシュタルケルの生演奏を聴いたことがあります。大阪のいずみホールというところで、バッハ、ベートーヴェン、ブラームスの2番ばかりを演奏しました。やはりあの独特のしぶい音を出していたのが印象に残っています。本日はシュタルケル独自のチェロの音色をたっぷりとお聴きいただこうと思います。 お聴きいただくとすぐにおわかりになると思うのですが、シュタルケルの音は他のチェリストと音が違います。そのため好みが分かれるところですが、私はシュタルケルの音色は心地よく感じます。以前からこのことをうまく表現できないかと思っていたところ、今朝のテレビ番組で神戸の長田をレポーターが紹介していて、ドロソースでおいしそうにそばめしを食べていました。そこで私はポンと膝をたたいて、これだと叫びました。やみつきになる音、あくまでも私個人の感想ですが、それがシュタルケルの魅力なのです。本日お聴きいただく、コダーイの無伴奏チェロ・ソナタやベートーヴェンのトリプル・コンチェルトはシュタルケルの独特の音色があって初めて、魅力的な曲になるように思います。
最初にお聴きいただくのは、コダーイの無伴奏チェロ・ソナタです。この録音でシュタルケルは一流のチェリストとして認められるようになったと言えます。難曲を軽々と演奏しており、彼の才能が遺憾なく発揮されています。それではシュタルケルの独奏でお聴き下さい。演奏時間は約27分です。
次にお聴きいただくのは、ブラームスのチェロ・ソナタ第2番です。チェロの低音の響きを堪能させる、明るい曲です。フルニエとバックハウスの名演もありますが、シュタルケルが歌に満ちた演奏をしており両レコードは甲乙つけ難いものとなっています。ピアノはアッバ・ボージン。演奏時間は約24分です。
次にお聴きいただくのは、ハイドンのチェロ協奏曲第2番です。第2楽章は短いですが、美しく、ここでもシュタルケルは歌に満ちた演奏をしています。ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団との共演でお聴き下さい。演奏時間は約26分です。
ここで少し休憩をいただきます。
後半最初にお聴きいただくのは、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番です。第3番と同様に人気の高い曲で、得に出だしのところは一度聴けば忘れられない、心に染みる旋律です。演奏時間は約14分です。
次にお聴きいただくのは、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3番です。ベートーヴェンは5つのチェロ・ソナタを残していますが、その中でも最も完成された人気の高い曲です。また独奏チェロの作品の中でもドヴォルザークのチェロ協奏曲と共に最もすぐれた曲であると思います。ピアノはアッバ・ボージン。演奏時間は約24分です。
プログラムの最後にお聴きいただくのは、ベートーヴェンのピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲、トリプル・コンチェルトです。この曲は余りよい評価を得ていないのですが、このレコードでシュタルケルが演奏するのをお聴きになればこの曲がよい曲であるとの認識を持たれることと思います。アラウのピアノ、シェリングのヴァイオリン、シュタルケルのチェロ、インバル指揮ニュ−フィルハ−モニア管弦楽団の演奏でお聴き下さい。演奏時間は約36分です。
本日もアンコール曲を用意させていただきました。3曲あります。最初は、シューベルトのアルペジョーネ・ソナタです。私は高校を卒業してから、クラシック音楽を聴き始めたのですが、最初に聴いたチェロの曲は、本日のプログラムの曲ではなく、ロシアのチェリスト、ダニール・シャフランが演奏する、この曲だったのです。残念ながら、日本盤しかないので、基本的に日本盤をかけないことにしている本コンサートではシャフランのレコードはお掛けできないのですが、トルトリエ盤を入手しましたので、本日はそれをお聞きいただくことにします。
アンコール曲の残り2曲は続けてお聴きいただきます。私は、今年の4月からクラリネットを習っているのですが、1月に発表会があり、ホルストの組曲惑星の中の木星の中の有名なあのメロディを演奏することになっています。そこで、プレヴィン指揮ロンドン交響楽団の演奏で、木星をお聴きいただくことにしました。もう1曲はクラリネットが出て来る室内楽の曲です。クラリネットの曲で有名な曲は、モーツァルトの協奏曲と五重奏曲、ブラームスの五重奏曲とソナタ2曲ですが、モーツァルトのいくつかの管弦楽曲、ベートーヴェンの七重奏曲、シューベルトの八重奏曲もよい曲です。今日はその中でも私が一番好きなシューベルトの八重奏曲の第4楽章をお聴きいただきます。演奏はメロス・アンサンブルで、クラリネットはジェルバース・ド=ペイエです。
本日も、レコードコンサートにおつき合いいただきありがとうございました。私のレコードコンサートは少し聴いていただくだけでも、歓迎致しますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。