本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても普通の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。
今回は、「多才なヴァイオリニスト シェリング」ということで、前半はモーツァルトのヴァイオリン・ソナタと変奏曲を、後半はメンデルスゾーン、シューマン、クライスラーの作品をシェリングの演奏でお聴きいただきます。
今回のLPレコードコンサートが始まる前、つまり先程ですが、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番をお聞きいただきました。本来なら今回のプログラムに入れるべきでしたが、残念ながらチューリップラベルのレコードが入手できず見送ることにしました。またルービンシュタインと共演した、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番から第3番もリヴィング・ステレオのオリジナル盤が手に入らなかったためお聴きいただくことができませんでした。それでも今日お聴きいただくレコードもそれらと比較して遜色ない名盤ですので楽しみいただけると思います。
それでは原稿に戻ります。 ヘンリク・シェリングは、1918年にユダヤ系ポーランド人の家庭に生まれました。ベルリンでカール・フレッシュに師事して、1933年にはブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏してデビューします。その後パリでブーランジェに師事しますが、第2次世界大戦中にヨーロッパ大陸を離れ、アメリカ大陸へと活躍の場を移して行きます。1946年にはメキシコ市民権を取得します。 私が初めて興味を持ったのは、演奏が難しすぎてレコードがほとんど出ていない、シューマンのヴァイオリン協奏曲をシェリングが引いているのを知ってからでした。その後、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ、パルティータ、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの演奏も聴き、幅広いレパートリーを格調高く技巧も優れたシェリングの演奏に驚いたものでした。 本日はモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ、先程も少しお話ししたシューマンのヴァイオリン協奏曲、そしてクライスラーの小品集をお聴きいただきます。
最初にお聴きいただくのは、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第40番と第41番です。先程もお話しましたが、同じフィリップス・レーベルということもあり、グリュミオーとハスキルの演奏は比較されて来たと思います。グリュミオー盤が典雅で軽やかな印象があるのに対しシェリングは味わい深い演奏をしていると思います。イングリット・ヘブラーとの共演で演奏時間は約47分です。
次にお聴きいただくのは、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第30番と第36番と「泉のほとりで」の主題による6つの変奏曲です。モーツァルトのヴァイオリン・ソナタはシモン・ゴールドベルクがラドゥ・ルプーと共演したレコードが有名ですが、こちらもモーツァルトの魅力を十二分に楽しませてくれるすばらしい演奏です。モーツァルトにはヴァイオリン・ソナタ第43番があり、シェリングも録音を残していますが、40曲以上が残っているのではないようです。演奏時間は約43分です。
ここでしばらく休憩をいただきます。
後半の最初は、メンデルスゾーンとシューマンのヴァイオリン協奏曲です。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲はドヴォルザークのチェロ協奏曲と同様にヴァイオリンの曲として最初に思いつく曲ではないでしょうか。シューマンのヴァイオリン協奏曲はこの名曲喫茶ヴィオロンの入口に飾られている、クーレンカンプの演奏が最も優れたもので、これ以上の演奏は今後も現れないのではと思われますが、このレコードはシェリングのまじめでひた向きな一面を堪能できるものとして貴重なものだと思います。またこの曲はゲルマン的な香りが強い曲であると考えます。演奏時間は約53分です。
プログラム最後の曲は、クライスラーの小品集です。自作自演が最も優れていますが、シェリングの演奏も明るい音色で楽しませてくれます。明るい音色でクライスラーを楽しませてくれたヴァイオリニストとしてイツァーク・パールマンがいますが、今から30年程前に来日して、美しきロスマリン、中国の太鼓、ウィーン奇想曲などをサミュエル・サンダースと演奏していたことを思い出します。演奏時間は約53分です。
本日もアンコール曲を用意させていただきました。本日はずっとヴァイオリンが主役の音楽ばかりを聴かれて少しお疲れではないでしょうか。次回は、ジェルヴァーズ・ド・ペイエ(クラリネット)を中心にメロス・アンサンブルの演奏をお聴きいただく予定ですが、どうしてもそこに収まらなかった名演をお聴きいただこうと思います。クラリネットの音色はヴァイオリンの鋭い音色と違うので脳にやすらぎを与えてくれると思うのです。私もクラリネット教室に通い始めてもうすぐ2年になります。マスターに先程許可を得ましたので、次回は少し吹かさせていただこうかと思っています。それでは、メロス・アンサンブルの演奏でブラームスのクラリネット五重奏曲をお聴き下さい。
本日も、レコードコンサートにおつき合いいただきありがとうございました。私のレコードコンサートは少し聴いていただくだけでも、歓迎致しますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。