本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、お聴きいただくレコードもなるべくオリジナルに近い音の良いものを選んでいますので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても普通の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。

今回は、「ルーマニアの女流ピアニスト クララ・ハスキル」ということで、没後50年以上経過した今でも多くのファンを持つ、クララ・ハスキルのモーツァルトとベートーヴェンの演奏をお聴きいただきます。 クララ・ハスキルは、1895年にルーマニアのブカレストに生まれました。幼い時に音楽的な才能を見出され、10才の時にパリ音楽院に入学します。15才の時に最優秀賞を得て卒業し、ヨーロッパ各地で演奏を始めます。順調に音楽活動を続けていたハスキルでしたが、18才の頃に脊椎の病気でギプスをはめるようになり、そのためか舞台で自分の実力が発揮できなくなりました。それから30年近くは好意的な評価が得られずレコードもほとんど残されていませんが、1950年頃から再び評価され始め1960年に亡くなるまでの約10年の間に、フィリップス・レーベルに名演を残しており、特にモーツァルトの演奏には定評があります。残されたレコードが極めて少なく、比較的音の良いレコードとなると、グリュミオーと共演したモーツァルトの6つのヴァイオリン・ソナタ、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集と今日お聴きいただくベートーヴェン、モーツァルトの作品、シューベルトの最後のピアノ・ソナタということになると思います。

最初にお聴きいただくのは、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第40番と第42番です。モーツァルトの音楽の素晴らしさが凝縮されたもので、ハスキルとグリュミオーの演奏はその魅力を十二分に引き出しています。エピック・レーベルとありますが、内容はフィリップス盤と変わりませんので、ご安心下さい。ハスキルとグリュミオーの2人はベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタも録音しており、音質の良いレコードが入手できれば聴いていただこうと思っています。演奏時間は約44分です。

次にお聴きいただくのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番と第18番です。ベートーヴェンはピアノ・ソナタを32曲作曲しており、「悲愴」「月光」「熱情」の他ベートーヴェンの標題が付いたピアノ・ソナタの人気は高いのですが、「テンペスト」もそういったピアノ・ソナタのひとつです。ベートーヴェンが、この曲を解釈するためには、シェイクスピアの「テンペスト」を読めと弟子言ったためこの標題が付けられました。第18番はハスキルが得意としていてよく演奏されたと言われています。演奏時間は約44分です。

ここで少し休憩をいただきます。 後半最初の曲は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番です。私自身、この曲をつい最近まで好きになれなかったのですが、それは最初のところが余りに暗いという理由からでした。しかし最近になってその後に続く明るい旋律が暖かく励ましている印象を持ったのと第2楽章の美しく甘美な旋律が好きになり、 ハスキルやケンプの演奏を聴くようになりました。マルケヴィッチ指揮コンセール・ラムルー管弦楽団との共演でお聴き下さい。演奏時間は約36分です。
クララ・ハスキルとリパッティとの友情はよく知られています。同じルーマニア出身の若い実力のあるピアニストが白血病で余命幾ばくもない。そこで彼女は自分のコンサートでリパッティのことを紹介したのでした。その後リパッティは多くの演奏家の支援を受けて、ショパンのワルツ集、シューマンとグリーグのピアノ協奏曲、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番など、不朽の名演を残します。私はその後ハスキルが積極的にレコード録音をするようになったのは、こういうことがあって自分でもやってみようと思ったからと考えるのですが、いかがでしょうか。

プログラム最後の曲はモーツアルトのピアノ協奏曲第20番と第24番です。第20番ではグルダの、第24番ではカサドシュの名盤がありますが、ハスキルのこのレコードは本当に味わい深い演奏で今後もモーツァルトのピアノ協奏曲入門のレコードであり続けると思います。マルケヴィッチ指揮コンセール・ラムルー管弦楽団との共演でお聴き下さい。演奏時間は約59分です。

本日もアンコール曲を用意させていただきました。先日、78才で亡くなった、フランスのトランペット奏者、モーリス・アンドレの演奏をお聴きいただきます。以前、オペラのアリアを吹いた、アルバム(邦題、超超絶トランペット)の一部を聴いていただきましたが、本日は小品集をお聴きいただきます。曲目は、M.A.シャルパンティエ:「テ・デウム」からファンファーレ アルビノーニ:アダージョ J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番からガヴォット ヘンデル:ラルゴ(オンブラ・マイ・フ) J.S.バッバ:カンタータ第68番からアリア「信じ待つわが心よ」 あらののはてに(クリスマス・キャロル) シューベルト:アヴェ・マリアです。それに引き続いて、ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」をカール・ベーム指揮ウィーン・フィルの演奏でお聴きいただきます。

本日も、レコードコンサートにおつき合いいただきありがとうございました。私のレコードコンサートは少し聴いていただくだけでも、歓迎致しますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。