本日はお忙しい中、レコード・コンサートに来ていただきありがとうございます。第1回はカザルスとフルニエ、第2回はクラリネットの名手ウラッハ、第3回は鍵盤の獅子王バックハウスのそれぞれの名演をお聴きいただきました。今回は、巨匠シャルル・ミュンシュの力強い熱気みなぎる演奏をお聴きいただきます。
ミュンシュは、1891年、当時ドイツ領(現フランス)だったストラスブルグに生まれました。最初はヴァイオリン奏者でしたが、1927年に指揮者としてデヴュー、1937年からはパリ音楽院管弦楽団の常任指揮者となります。1949年からは、クーセヴィツキーの後任としてボストン交響楽団の正指揮者となり、1962年までの約13年間、ボストン交響楽団の黄金期を築き上げます。その後フランスに帰り、フリーで活動。1967年、パリ管弦楽団の初代音楽監督になります。
私事で恐縮ですが、クラシックをじっくり聴くようになって、最初に夢中になった指揮者がミュンシュでした。本日のプログラムの最後の曲、ミュンシュ指揮パリ管弦楽団によるブラームスの交響曲第1番の演奏を聴かなかったら、恐らく、今のようなクラシックファンになっていなかったでしょう。この演奏は、すばらしい音楽を聴くこと以外にも、暗澹とした気持ちの時に励ましてくれたり、完全燃焼の爽快さや美しさを教えてくれたりしました。
今日は、そのミュンシュの演奏の中でも最も力のこもったものを選んでおかけします。ミュンシュは、1937年からパリ音楽院管弦楽団の常任指揮者となりますが、当時の演奏は聴くことはありません。やはり、ボストン交響楽団との数多くのレコードとパリ管弦楽団との4枚のレコードが、ミュンシュの残した遺産と言えます。プログラムの前半にボストン交響楽団を指揮した演奏、後半にパリ管弦楽団を指揮した演奏をお聴きいただきます。
最初にお聴きいただくのは、シューベルトの交響曲第9番「ザ・グレイト」です。この曲は、シューベルトの死後10年以上たって、シューマンが発見し、メンデルスゾーンの指揮で初演されました。シューベルトが尊敬するベートーヴェンの影響を強く受けながらも彼自身の特徴である強いロマンティシズムを漂わせたスケールの大きな作品です。本日は、第1楽章と第2楽章をお聴きいただきます。演奏時間は約27分です。
次にお聴きいただくのは、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」です。この曲は2つの楽章で構成されていますが、2つの楽章とも前半と後半では性格が異なり、実際は4楽章の交響曲と考えられています。第1楽章後半のオルガンが弦楽合奏と共に叙情的な美しい旋律を奏でるところは、第2楽章後半の荘重な調べと共にこの曲の聴きどころです。演奏時間は約35分です。
ここで10分間の休憩をいただきます。
後半は、ミュンシュ最晩年の名演を2曲お聴きいただきます。まず、フランスの作曲家ラヴェルが作曲したボレロをお聴きいただきます。先日放送されたNHK-FMのクラシック番組の「私の好きな曲」で第1位となった曲で、非常に人気のある曲です。同一の旋律が、楽器編成を変えて何度も繰り返され最高潮に達した時に、突然終わるというユニークな曲です。ミュンシュの演奏は、最高潮に達した時に熱気がほとばしるようです。演奏時間は約17分です。
プログラムの最後の曲は、ブラームスの交響曲第1番です。先程も申しました通り、私をクラシック音楽の世界に導いてくれたレコードで、このレコードとの出会いがなければ、クラシックのファンにならなかったかもしれません。曲自体もすばらしく、出だしの重厚な響き、第2楽章のヴァイオリンとオーボエのソロの美しさそして終楽章のこれでもかこれでもかと輝かしい未来を暗示させる旋律が続くところ、いずれをとっても本当にすばらしい曲です。ミュンシュの演奏はいつも以上に熱気を帯び、心に強く訴えかけて来ます。演奏時間は約48分です。
コンサートの最後にアンコール曲を用意致しました。同じくミュンシュ指揮による演奏で、ベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」の第4楽章をおかけします。第9ではフルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団他の名演がありますが、それに劣らぬすばらしい演奏です。オーケストラはボストン交響楽団。演奏時間は約24分です。
本日は長時間にわたるレコード・コンサートにおつき合いいただきありがとうございました。今後とも、このレコード・コンサートをご愛顧いただきますようよろしくお願い致します。また、プログラムの一番下にありますように、私のホームページも是非ご覧下さい。よろしくお願いします。