本日は、お忙しい中、LPレコード・コンサートに来ていただきありがとうございます。第1回はチェリストのカザルスとフルニエ、第2回はクラリネット奏者のウラッハ、第3回はピアニストのバックハウス、第4回は指揮者のミュンシュのそれぞれの名演をお聴きいただきました。今回は、ウィーン正統派でありながら、独自の感性を持つピアニスト、フリードリッヒ・グルダの才気あふれる演奏をお聴きいただきます。
グルダは、1930年ウィーン生まれ、ウィーン国立音楽院で学び、16才のときにジュネーヴ国際コンクールで入賞、国際的な活動を始めます。レパートリーの中心はモーツァルト、ベートーヴェンですが、バッハ、ドビュッシー、ショパンの曲にも名演が残されています。また、ジャズの演奏のレコードもいくつか残しています。
本日は、グルダのベートーヴェンとモーツァルトの演奏をお聴きいただきます。グルダの名演をあげるとすると、グラモフォン、アマデオに残したモーツァルトのピアノ協奏曲、ピアノ・ソナタやグラモフォン、デッカに残したベートーヴェンのピアノ協奏曲、ピアノ・ソナタの演奏も思い浮かびますが、何といっても、まっさきに思いつくのは、本日前半にお聴きいただく、アマデオのベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集です。
グルダは20代の頃に、デッカにベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を完成させていますが、本日は、1967年グルダが37才の折、7月から8月にかけての2ヶ月間に集中して録音された、ピアノ・ソナタ全集から3曲をお聴きいただきます。
最初にお聴きいただくのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情」です。次にお聴きいただく「悲愴」ソナタ、第3回のLPレコード・コンサートでバックハウスの演奏でお聴きいただいた「月光」ソナタと共に三大ソナタと言われています。バックハウス、ケンプ、リヒテルが名演を残していますが、グルダの演奏は少し速めのテンポで奏され、心地よい感動が聴いたあとに残ります。演奏時間は約20分です。
次にお聴きいただくのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」です。三大ソナタの一つで、初期のピアノ・ソナタの中で最も有名な曲です。特に第2楽章は歌詞を付けて、ポピュラー音楽として歌われたり、イージーリスニングとしてオーケストラで演奏されたりしています。演奏時間は約18分です。
前半最後にお聴きいただくのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第15番「田園」です。同じ標題の交響曲と同様に、牧歌的で、やすらぎを与えてくれる名曲です。この標題はベートーヴェン自身がつけたのではなく、出版社がつけたのですが、曲の雰囲気をうまくとらえた標題だと思います。演奏時間は約22分です。
ここで10分間の休憩をいただきます。
後半は、クラウディオ・アバド指揮ウィーン・フィルと共演した、モーツァルトのピアノ協奏曲を2曲お聴きいただきます。まずお聴きいただくのは、第21番です。スウェーデン映画『みじかくも美しく燃え』で第2楽章の旋律がテーマ曲として使われ、よく知られるようになりました。リパッティがカラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団と共演した、不朽の名盤がありますが、グルダの演奏はタッチが軽やかで、一つ一つの音がきらめきに満ちています。演奏時間は約29分です。
プログラム最後の曲は、モーツァルトのピアノ協奏曲第27番です。モーツァルト最晩年の曲で、モーツァルトの天国的な調べに満ちた曲です。アバド指揮ウィーン・フィルの伴奏もすばらしく、美しい旋律に満ちたモーツァルトの音楽をたんのうさせてくれます。演奏時間は約32分です。
コンサートの最後に、アンコール曲を用意しました。バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番です。本日は、その極めつけの演奏と言われる、ヨハンナ・マルツィの演奏をお聴きいただきます。演奏時間は約25分です。
本日は、長時間にわたり、LPレコード・コンサートにおつき合いいただき
本当にありがとうございました。今後とも、このレコード・コンサートをご愛顧いただきますようよろしくお願い致します。また、プログラムの一番下にありますように、私のホームページを是非ご覧下さい。よろしくお願いします。