本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、名曲喫茶ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても普通の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。

 今回は、「カナダのピアニスト グレン・グールド」ということで、1956年にゴルトベルク変奏曲のレコードを発売して一躍有名になりましたが、1964年からはコンサート活動をやめ、バッハのスタジオ録音を中心に演奏活動を行い、わずか50才でこの世を去ったグレン・グールドの演奏をお聴きいただきます。

 グレン・グールドは、1932年カナダのトロントに生まれました。7才でトロントの王立音楽院に入学、14才の頃にはトロント交響楽団と共演して、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番でデヴューします。1956年に初めてのレコード、バッハのゴルトベルク変奏曲が発売されると一躍有名になります。カラヤンやストコフスキーとヨーロッパで共演し、1959年のザルツブルグ音楽祭に出演したグールドは世界的なピアニストの地位を確立します。しかし、1964年にはコンサート活動から一切手を引き、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスのスタジオ録音中心の音楽活動へと移って行きます。

ちょうど私が大学生の1982年に亡くなりますが、1981年にゴルドベルク変奏曲の再録音をしてその評価が高かったので、とても残念に思った記憶があります。

 本日は、前半でベートーヴェンの晩年のピアノ・ソナタ3曲とピアノ協奏曲第5番「皇帝」を、後半で、ベートーヴェンの交響曲をビアノ独奏用にリストが編曲したものと1956年録音のゴルトベルク変奏曲をお聴きいただきます。

 最初は、ベートーヴェンの晩年のピアノ・ソナタ3曲です。ベートーヴェンが

50才〜51才の頃に作曲されたこの3つのピアノ・ソナタは作品番号も109、110、111となっており、一緒にレコーディンングされることが多いようです。ケンプやバックハウスの名盤もありますが、本日は、グールドの演奏をじっくりお聴きください。演奏時間は約55分です。

 次にお聴きいただくのは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」です。

グールドは極端にテンポを遅くしたり早くしたりします。この演奏もテンポが遅いと言われ、第1楽章の最初のところで少しそのように感じるところがありますが、普通のテンポの演奏だと思います。演奏時間は42分です。

 ここでしばらく休憩をいただきます。

 後半、最初にお聴きいただくのは、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」(リスト編曲)の第1楽章です。グールドはこの「田園」の全曲盤もあるようですが、本日は第1楽章だけを録音したものをお聴きください。演奏時間は約10分です。

次にお聴きいただくのは、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」(リスト編曲)です。リストはベートーヴェンの交響曲を全曲ピアノ独奏用に編曲しており、シュプリアン・カツァリスは9曲すべてをレコーディングしていますが、私はその田園、第7番をよく聴きました。田園はカツァリスの方がよいように思いますが、運命は録音もよく、感動的な演奏になっていると思います。演奏時間は約39分です。

最後にお聴きいただくのは、バッハのゴルトベルク変奏曲です。グールドの代名詞ともなっていますが、やはりこのレコードが優れている理由は絶妙のテンポ感にあると思います。グールドの再録音、レオンハルトのハープシコード演奏、シトコヴェツキ弦楽合奏それにハープの独奏(カトリン・フィンチ)の演奏もあってどれも興味深いですが、第1選択としてはこのレコードになると思います。演奏時間は約38分です。

 本日もアンコール曲を用意させていただきました。私事で恐縮ですが、本年5月5日に長年探していたレコードを手に入れることができました。それはチャイコフスキー交響曲第5番をストコフスキー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団が演奏したものです。私が今から39年前にこのレコードを愛聴するようになり。1994年頃から外国盤を蒐集するようになってから、20年余り探していたものです。大阪の中古レコード店で見つけました。もしかしたら、オリジナルではないのかもしれませんが、良い音なので、一緒に聴いていただこうと思います。演奏時間は約50分です。

このストコフスキーのレコードに出会って、39年になりますが、辛い時によくこのレコードを聴いて、乗り切りました。そんなレコードをこれからもこのLPレコードコンサートで提供できたらいいなと思っています。

本日も、レコードコンサートにおつき合いいただきありがとうございました。私のレコードコンサートは少し聴いていただくだけでも、歓迎致しますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。