本日は、お忙しい中、レコードコンサートにご来場いただきありがとうございます。このレコードコンサートは、名曲喫茶ヴィオロンのすばらしいオーディオ装置で私の愛聴盤をお聴きいただくもので、ハード、ソフト共に優れた音楽を心行くまでお楽しみ下さい。なお、コンサートと言いましても普通の営業と変わりませんので、くつろいでお聴き下さい。

今回は、「イスラエル出身のヴァイオリニスト イツァーク・パールマン」ということで、20世紀後半で最も偉大なヴァイオリニストと言われ、音楽教育者としても大きな功績を残しているイツァーク・パールマンの名演奏をお聴き頂きます。

イツァーク・パールマンは1945年イスラエルのテル・アヴィヴに生まれます。3才の頃にラジオでヴァイオリンの演奏を聴いて深く感動し、ヴァイオリンに興味を持ち始めます。それからしばらくして正式なレッスンを受けるようになりますが、4才3ヶ月のころに小児麻痺を発症し、下半身が不自由になります。それでもヴァイオリニストになる夢を持ち続け、10才の頃にはテル・アヴィヴでリサイタルを開きます。13才の頃にアメリカのテレビ番組でヴァイオリン演奏を披露し人気者となり、アイザック・スターンの推薦を得てジュリアード音楽院で学びます。17才の頃にはカーネギー・ホールで演奏し。18才の頃には、レーヴェントリット国際コンクールで優勝します。その後はアメリカのメジャーオーケストラから共演以来が殺到します。

私が初めてパールマンを聞いたのは、NHK教育テレビででした。今から40年程前のことです。サミュエル・サンダースと共演して、クライスラーの小品を弾いていました。松葉杖をついて登場し、サンダースからヴァイオリンを受けとるとすばらしい技巧で演奏していたのが今でも目に浮かびます。足が不自由なのに笑顔を絶やさず、難しい曲を軽々と演奏していたのを記憶しています。当時私は浪人生だったのですが、障害を持っている人が明るい表情でクラシックの難しい曲を弾いているのを見て、私も頑張らねばと思ったものでした。

クライスラーの次はフランク、いくつかのヴァイオリン協奏曲を聞いた後、ブラームスのヴァイオリン・ソナタをよく聞きましたが、ハイファエッツ、ミルシテイン、シェリング、グリュミオーそしてオイストラフを聴くようになるとパールマンの明るい音色がマイナスイメージを持つようになり、クライスラー以外の曲はほとんど聴かなくなりました。こうして私はほとんどパールマンを聴くことはなくなりましたが、パールマンのいくつかのレコード、特にアシュケナージと共演したソナタは今でも充分に聴く価値があるものだと思っています。

本日は、前半にオーケストラとの共演、後半にピアニストとの共演で彼の名演を聴いていただきます。

最初は、バッハのヴァイオリン協奏曲です。普通であれば、ヴァイオリン協奏曲の1番と2番、2台のヴァイオリンのための協奏曲となるのですが、なぜかこのレコードは1BWV1041の変わりにト短調BWV1056のヴァイオリン協奏曲となっています。演奏時間は約46分です。

次にお聴きいただくのは、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番です。いずれの曲もパールマンの明るい音色に合った曲で、プレヴィン指揮ロンドン交響楽団の伴奏もすばらしい演奏です.演奏時間は約54分です。

前半最後は、ブルッフのスコットランド幻想曲です。オイストラフ、ハイフェッツの名演がありますが、パールマンの演奏も彼らに引けを取らない名演です。パールマンは明るい音色を押さえ、落ち着いた演奏をしてしみじみとしたこの曲の魅力を引き出しています。演奏時間は約33分です。

ここでしばらく休憩をいただきます。

後半、最初にお聴きいただくのは、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲です。アシュケナージとの共演ですが、さらにチェロのリン・ハレルが加わった三重奏曲もいくつか残しています。ブラームスのヴァイオリン・ソナタのベストは、オイストラフですが、シェリングとルービンシュタインが共演したものも優れた演奏と言われています。演奏時間は約68分です。

 次にお聴きいただくのは、フランクのヴァイオリン・ソナタです。最初に言いましたように私はパールマンのクライスラーの演奏をテレビで見て、彼の演奏が聴きたくなり、クライスラーの2枚組のレコードを買ったのですが、その後ラジオでこのフランクのヴァイオリン・ソナタのレコードを聴き、さらに彼の演奏が好きになったのでした。演奏時間は約28分です。

最後にお聴きいただくのは、クライスラーの小品を3曲です。特にロンドンデリー・エアは大好きな曲で、好きが高じて、自分のホームページにピアノ伴奏でクラリネットを演奏するまでになりました。その切っ掛けを作ったのが、このパールマンの演奏でした。演奏時間は約9分です。

本日もアンコール曲を用意させていただきました。私がパールマンをよく聴いていた頃に、NHKFMで夜の停車駅という番組が日曜日の夜に放送されていました。ということでその番組のテーマ曲であるラフマニノフのヴォカリーズをアンナ・モッフォの独唱、ストコフスキー指揮アメリカ交響楽団の演奏でお聴きいただきます。演奏時間は約7分です。