本日はお忙しいところ、LPレコードコンサートに来ていただきありがとうございます。

2002年から2019年まで開催して来ましたこのLPレコードコンサートもコロナ禍で3年余り自粛してきましたが、ようやく規制が緩和され以前のような形での開催が可能となりました。

引き続きマスクの着用など感染防止のためにご協力いただき、当面は2時間以内での開催となりますが、以前のように音の良い名盤を聞いて頂こうと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

本日は再開第2回目、通算で73回目となりますが、鍵盤の獅子王と呼ばれ、音色の素晴らしさ技巧ともに王者の風格があるウィルヘルム・バックハウスの名演を聞いていただこうと思います。

ウィルヘルム・バックハウスは1884年ドイツのライプツィヒに生まれました。7才でライプツィヒ音楽院に入学し、1905年にはルビンシュタイン音楽コンクールで優勝します。戦時中母国ドイツで活発な音楽活動をしたため、1946年にスイスに帰化した後も戦後はなかなか演奏の場が与えられず、1954年になってようやくアメリカでのコンサートが行われました。その後1969年に亡くなるまでコンサート活動とデッカレーベルへの録音が行われましたが、その主なものはベートーヴェンのピアノ協奏曲、ピアノ・ソナタで、他にブラームス、シューマンの名盤が残されています。本日はオール・ベートーヴェン・プログラムということでピアノ協奏曲第1番と第5番「皇帝」、それからピアノ・ソナタの「月光」と「悲愴」をお聞きいただきますが、ピアノ協奏曲第3番と第4番も素晴らしい演奏ですのでいつか聞いていただこうと思っています。

それではプログラムに入りたいと思います。最初はピアノ協奏曲第1番とピアノ・ソナタ「悲愴」です。この2曲は1枚のレコードに収められていますが、73、4才の頃のバックハウス円熟の境地の名演をお聞きください。演奏時間はピアノ協奏曲第1番が約33分 ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」が約15分です。

次に「月光」と「皇帝」を続けて聞いていただきます。いずれもバックハウスの素晴らしい演奏が聞かれますが。「皇帝」のハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮ウィーン・フィルの伴奏も素晴らしいです。「皇帝」のレコードは数多ありますが、デッカの優れた録音ということもあり最も優れた「皇帝」のレコードのひとつと言えると思います。演奏時間はピアノ・ソナタ第14番「月光」が約14分、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」が約38分です。

少し時間がありますので、先程紹介しましたバックハウスのベートーヴェンピアノ協奏曲第4番の後半部分をお時間まで聞いていただきましょう。


それではプログラムに入りたいと思います。最初はシューマンの交響曲第3番「ライン」をお聞き頂こうと思います。この交響曲の第1楽章が大学の入学式で大学の交響楽団によって演奏されたこともあって、私にとって懐かしい気持ちになる交響曲です。全楽章美しいメロディがあり、随所に高揚した気分になる素晴らしい曲です。カラヤン、アバド、クレンペラーなどの演奏も聞きましたが、セルの演奏は他の追随を許さない演奏であると思います。演奏時間は約33分です。

次はブラームスの交響曲第3番です。ブラームスは4つの交響曲を作曲しており、第1番と第2番は名演がたくさんありますが、この第3番はセル指揮の演奏が特に素晴らしいです。第3楽章だけでなく最初と最後の楽章も、いえ全てが緻密で完成された演奏だと思います。演奏時間は約35分です。

最後にお聞きいただくのは、ドヴォルザークの交響曲第8番です。ジョージ・セルはベートーヴェンの交響曲全集を録音していますが、私個人としては、それよりもシューマン、ブラームスとドヴォルザークの交響曲第7番、第8番、第9番がより素晴らしい演奏であると思います。特にドヴォルザークの第8番は3度録音していて、クリーヴランド管弦楽団とは1958年にも録音しており、こちらも味わい深い名演と言われています。巨匠最後の録音をじっくりお聞きください。演奏時間は約39分です。

今後も3ヶ月に一度、LPレコードコンサートを開催しますので、ご愛顧いただきますようよろしくお願いします。