京都五山の送り火探訪 2022年



2016年から始まった私の京都五山の送り火探訪も5回目となりました(2020年と2021年は点火箇所を大幅に縮小されて実施されたので、私は行きませんでした)。今回は3年ぶりの完全(全面)点火となり、私も久しぶりに送り火を見に出掛けたのでした。毎回、悪天候に苦しんだり、私の撮影技術の稚拙さが判明したり、ロケーションの難しさ(例えば大勢の人が観覧するところに三脚を立てて撮影するわけには行きません)に懊悩したりといろいろ苦労するのですが、今回はその3つともがありました。

今回は最初から鳥居形だけを撮ると考えていましたので、午後4時から5時の間に自宅を出て早い目の夕食を取って目的地に行こうと考えました。最初は松尾橋から撮影しようと考えて、1時間前に松尾橋に行けばいいと考えました。ただ嵐山も撮影スポットと聞いていましたので、2時間前に嵐山に行き撮影映え(なにせ渡月橋がありますから)するようなら嵐山で撮影しようという考えもにわかに湧き上がって、とりあえずは嵐山に行ってみようということになりました。

阪急嵐山駅を出て桂川まで出たところで時計を見ると午後6時20分になっていました。鳥居形の点灯が午後8時20分ですからそれまで2時間ありました。私はざっと辺りを見てみるととても気になったのは、渡月橋の上に橋が落ちてしまわないかと心配になるくらい沢山の人が橋の上に乗っかっていたことです。そうしてもしかしたら松尾橋も同じように身動きが取れないくらいいっぱいの見物人が乗っかっているのではないかと考えたのでした。以前高野橋から「法」を撮る時にも前に人がいてなかなかシャッターが切られなかったことも思い出して、松尾橋からの撮影は踏みとどまりましたが、もう一つ理由はありました。以前私は松尾橋に行った(2016年8月19日)のですが、そこから見える鳥居形がとても小さいと感じたのでした。嵐山からなら距離も近いし、渡月橋もフレームに取り込めるかもしれないと思ったのでした。

まっすぐ河岸まで行って嵯峨野の方を見ましたが、鳥居形らしきものは見当たりませんでした。近くで精霊流しの作業をされている方に方向を尋ねるとそこから渡月橋の東側からちょっと山側の松明が燃えているところと言われました。そう言われてみると暮れかけていて見えにくかったのですが、松明が焚かれていて山肌が刈り取られて薪が鳥居の形に並べられているように見えました。

私はしばらくそのあたりをうろうろしましたが、渡月橋の上で写真を撮るのは難しい、渡月橋西側の橋から30メートル位下った河岸があたりが比較的見やすいのではと判断しました。鳥居形の点火の1時間40分くらい前でしたが、精霊流しがあるということで河岸には沢山の人(地元の人、観光客など)がいてなかなか一番前に出るのは大変かなと思っていたところ、駅を下りたことからにわかに黒くなって行った空から雨粒が落ちだしました。しばらくするとそれが大粒になり傘なしではそこに立っていられないような激しい降りになりました。私は傘を用意していたのですぐに差しましたが、そうでない人は近くのテントに逃げ込みました。お坊さんが沢山いるテントにも人がいっぱいでした。雨は傘を差していてもずぶ濡れになるくらいのひどいものでした。40分ほどして一度やみましたが、20分程のお休みの後にまた雷鳴と共に大雨が降り始めました。私はどうしようかと思いましたが、2016年の五山送り火の時も大雨になったのですが結局敢行されたことを思い出し、今日はどんなことがあっても午後8時40分まではいるぞと思いました。結局午後7時頃に雨は止みましたが、その頃には辺りは完全に真っ暗でした。

目の前では精霊流しが始まりましたが、私の目的は鳥居形の撮影だったのであまり興味はありませんでした。それでも隣の人がスマホで動画を撮っているのを見て面白いなぁと思いました。その方は写真の撮影は苦労されていたようですが、動画はうまく行ったのか、どうだったのか気になるところです。露出の問題は動画だとクリアされるのでしょうか。

私はライカM9で撮影したのですが、ISO2500に設定すればかなり暗い場所でも撮影できると考えたのですが、そうではありませんでした。大雑把に言って、ISO100 絞り4 シャッタースピード1/60で切れるとして、ISO200なら、1/125 400なら1/250、800なら1/500、1600なら1/1000、3200なら1/2000となるのですが、仮にそれがISO100で絞り2.8でもシャッタースピードが4秒かかるとするなら、ISO3200でも1/8ですから、三脚なしでは撮影ができません。いかに手振れしないことに自信がある人でも1/15で手取りするのは無理だと言われます。ですから普通で行くと絞りを開放にしてISO400で1秒かかるならISO値を上げても画像の質感が落ちるだけできちんとした写真は撮られないと考えます。
それともう1つの問題は自動露出の場合どこの明るさで撮影されるかということですが、どうも焦点を当てた被写体の明るさで絞りとシャッタースピードが決まるわけではないようです。次の写真は何だかわからない写真ですが、一番明るいところに露出が合って撮影された写真ということがよくわかるので、ここに掲載します。

右下にうっすら明かりが見えますが、今回のような暗闇の中ではISO2500にしても手取りで撮られる写真はこれが限界なのです。同じ条件で撮影するなら、最低300ミリのレンズで三脚を立てて自動露出ではなくマニュアル撮影(バルブ撮影)するしかないと考えます。でも先程も言いましたように多くの人が河岸に詰めかけている状況ではそれも難しく、他の方法を考えるしかありません。例えば鳥居形は大覚寺からも見えるということなので、大覚寺近辺から撮るか、化野念仏寺の近くで送り火を焚いているということなのでその近辺の鳥居形がよく見えるところということになります。

とにかく今回の五山の送り火の撮影はずぶ濡れになって奮闘した割には一枚も鳥居形の写真が撮れず惨敗だったと言えます。ですが、ずぶ濡れになりながら点火を待ち沢山の人と一緒に鳥居形を見たことは、間違いなく心に刻みつけられたことと思います(ちょっと負け惜しみのように聞こえるかもしれませんが)。